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最近{縁無し畳}がとても人気ですよね。
部屋が広く見えますし半畳の市松敷きはお洒落で私も良いと思います。
しかし縁無し畳には無い、縁付き畳の素晴らしい利点があるのをご存じでしたでしょうか?
今回は畳の良い引き立て役である{畳縁(たたみべり)}について紹介していきたいと思います。
当店のラインナップ
・畳縁の歴史
あまり専門的になりすぎても難しいだけですので、畳を庶民が使う現在のような様式(部屋に敷き詰める)になってからを詳しく説明します。
因みにそれ以前は身分の高い人間しか使用しておらず、板の間に半畳ほどの畳を置いていました。
その際、畳縁の柄によって天皇や大臣といったように位の差を識別していたようです。
厚畳(礼盤畳・一畳台)に高麗紋縁
一般庶民が畳を使用できるようになったと言われる江戸時代。
庶民は高麗紋縁のような高貴な縁は使えませんので、普通の織布を長めに裁断して畳へ縫い付けていたようです。
当時は{麻}と{綿}が主な繊維生地でしたので、それを黒や茶色に染めて畳の縁としていました。
現在でもお茶室に麻や綿の{黒縁}が使用されているのは、その当時と変わらない伝統なのだと思います。
綿の光輝縁(こうきべり)を織る機械
現在では{ポリエチレン}{ポリプロピレン}{ポリエステル}といった化学繊維が主流になり、麻の縁は大変高価な素材となっています。
化繊で出来た縁
・畳縁の種類は全部で何種類?
様々な色や柄のある畳縁ですが多くのメーカーは福井県と岡山県にあります。
私は過去に4つの工場を見学しに行きましたところ、どのメーカーも「畳縁の種類数がいくつあるのか?」の質問に答える数が違いました。
多数のメーカーがあることと、新柄や廃版がありますので正確には把握しきれていないというのが現状のようです。
しかし少なく答えたメーカーでも1000種類。
多く答えたメーカーは2000種類と言っていますので、全国に流通している畳縁は『約1500種類』ということに独断で決めたいと思います。
因みにその全てを在庫することは問屋さんでも不可能です。
当店の場合は約30種類を常時在庫し、急なご依頼でも対応できるように心がけております。
価格は畳店さんによって違いますが畳の付属品として無料のお店が全国的には多いです。
自店で在庫していない縁は取り寄せになるので有料になることがほとんどですし、最近では畳縁を利用したバックなどの小物作りのため縁を切り売りするお店も増えてきました。
オンラインでカタログを見れるメーカーもありますので、こだわりのある方はそちらもご利用ください。
こんな縁もありますよー
・畳縁が付いている理由とは
まずは過去に遡ってみましょう。
前述のように身分の違いを現すための時代、畳縁は重要な役割をしていました。
これは畳の構造上の問題もありまして、畳表(ゴザ)の端になる断面を保護し隠すといった理由もあります。
その後は畳縁が高価になると{縁無し畳}が普及するようになります。
縁無し畳の構造は四辺を畳表で包み込むようになっており断面が出ないのが特徴です。
一般庶民でも出来るだけお金を掛けずに畳替えをする知恵と工夫から生まれた縁無し畳は、その経緯と構造から『野郎畳』や『坊主畳』と一段低い愛称で呼ばれていました。
人気の縁無し畳
戦後の時代になると日本は高度成長期に入り、畳の製造工程が手縫いから機械縫いに変化してきます。
また、畳縁の製造も大きな工場でたくさんの織機を並べ大量生産の体制が整いました。
これにより畳縁の価格は安くなるのと同時に、畳製造でも機械化によって縁の縫い付け作業が簡単になり生産効率が大幅に改善されたことも縁付きの畳が増えた要因だと思います。
面白いことに現在では縁無し畳は高級品で縁付き畳と逆転してしまいました。
縁無し畳を作るのには畳表を濡らして折り曲げる作業が必要で、縁付きのように畳表を裁断して縫い付けるよりも手間が掛かるようになり高級化してきた経緯があります。
また、縁無しの琉球畳のように畳表が強い耐久性の素材でないと、折り曲げた箇所が足の摩擦などで擦り切れやすく張り替えの頻度が上がってしまいます。
現在のような化学繊維を使用した畳縁は非常に耐久性があるので(アイロンなどの熱には弱い)、畳を張り替える頻度は昔に比べて長くなったのは間違いありません。
・畳の縁を踏んではいけない?
よく聞く話で年寄りから「畳の縁は踏んではいけない」と昔から言われています。
ではなぜ踏んではいけないのでしょうか?
その問いを解くキーワードは『年寄り』にあるかもしれません。
私が知っている限り畳の縁を踏んではいけない理由として2つの説があります。
まずは『畳縁に家紋が入っていたため』という説です。
家紋はとても大事な印ですから絶対に踏んではいけませんよね。
しかし一般庶民の座敷に家紋の入った縁は使われていないはずなので、この説を私は信用していません。
説として有力なのはもう一つの『畳の縁が傷むから』です。
先ほども説明させてもらったように昔は化学繊維の畳縁なんてありませんでしたから、麻や綿で出来た縁は摩耗に弱く日焼もするため畳表の寿命より縁が先に擦り切れて張り替えになっていたようです。
物を大事に使う日本人ならではの風習でしょうね。
化繊の縁の普及によりお年寄りしか「縁を踏んではいけない」と言わなくなったのだと思います。
・施工例
畳の縁によってお部屋の印象は大きく変わります。
昔ながらの黒や茶色の無地は若い人からすれば古臭いと感じるかもしれませんが、ある程度上の世代では高級感があると感じたり、部屋が締まるといった見方も出来ます。
好みは人それぞれなので、自分の部屋に合った自分好みの畳縁を選んでみるのは面白いですよね。
縁無し風の縁付き半畳一松敷き
新幹線の縁
畳縁の最高峰 繧繝(うんげん)縁
また、畳縁も進化しています。
素材の改良により紫外線防止や抗菌などの機能がある縁や、デニム生地や金色の縁など、自宅にあったらお客さんにちょっと自慢出来るような縁もあります。
・まとめ
◎畳の縁は畳表の断面を保護して隠す機能があるため、付いていた方が耐久性が高く長持ちする。
◎畳の張り替え工程が機械化され、縁無し畳よりも縁付き畳の方が施工費用が安価に抑えられる。
◎現在では多種多様な畳縁があるので好みに合わせて和室が自由にカスタマイズ出来る。
東京都北区で四代110余年
有限会社 八巻畳工業