例年10月に開催されていた藺草(いぐさ)の品評会ですが、各地で「10月は農家も畳屋も忙しいから2月にしてくれー!」と言い続けた所、今年は2月に開催される運びとなりました。言い続けてみるもんですね。

という事で東京の青年部メンバー5人で熊本県八代市に行って、品評会で受賞した畳表を見学することに。

この品評会に合わせて畳屋と藺草農家の意見交換会やセミナーがありましたので、勉強好きな私たちは農家さんの現地視察も含めて4日間、寝る間を惜しんで親睦と勉強に精を出してきました。

 

展示会場にて

 

 


会場の雰囲気

 

 

藺草・畳表の品評会ってなに?

一言で言うと『日本一の藺草農家を決める』一大イベントです。

畳は藺草(いぐさ)という草を織り込んで畳表に農家さんがして出荷する訳ですが、藺草のみの『い草』部門と製織された『い製品』の部門に分かれています。

現在、藺草の生産量は90%以上(実際にはもっと)が熊本県産です。

そのため熊本県で約250軒残る農家さんが競い合った品評会は日本一を決める大会と言っても過言ではありません。

審査官の厳密な品質チェックにより最高峰は『農林水産大臣賞』という称号が貰え、これは毎年日本一の藺草農家であることを証明しています。

今回農林水産大臣賞を受賞した早川さんや、4度も受賞したレジェンド橋口さんは畳業界では知らない人がいないほど有名な農家さんで、仕上がった畳表の素晴らしさは勿論ですが製品になるまで約2年掛かる歳月を栽培面でも神経を使って育成しているそうです。

 

並べられた畳表

 

藺草の原草

 

 

若い生産者が快挙!全国い生産団体連合会長賞を受賞するまでの道のり

私が10年通い続ける藺草農家の吉田家長男、貴幸君がなんと今回約250軒の農家さんの中でベスト5である『全国い生産団体連合会長賞』を35歳の若さで受賞しました。

お父さんの昭則さんは、まだ世帯主の名前でなければ受賞できない頃に1位である『農林水産大臣賞』を受賞(当時はお爺ちゃんの名前で)するほど、優れた藺草農家さんです。

その息子さんが今回、全国い生産団体連合会長賞を受賞するまでにはいくつもの困難がありました。

 

そもそも『ポット苗』と呼ばれる藺草の栽培方法を取っている農家さんは10月の品評会時期に大変忙しく、他の栽培方法の方と比べて品評会用に製織するという事が困難な状況にあります。

それでも過去に3等を受賞するなど健闘していましたが、そもそもお父さんの昭則さん自体、最優秀賞を受賞した畳表は普通に出荷する畳表を展示したところ受賞してしまったという凄腕の農家さん。

息子さんは大変プレッシャーの中、品評会に合わせて製織しようとしたところコロナに罹患してしまい普段通りの畳表しか出展できなかったそうです。

しかも受賞した他の畳表は京間サイズ(関西方面で使用される大き目の畳表)が通常で、貴幸君が出展したのは関東以北で使用される関東間サイズの小さい畳表でした。

不利な状況の中ベスト5は大健闘と言って良いですし、会場の畳店さんからも「吉田さんの藺草は太いね!」とお褒めの言葉をいただいていました。

新品種の『涼風』で受賞したのも凄いですし、この農家さんについてきて本当に良かったと思い、貴幸君やご両親に負けないくらい歓喜いたしました。

 

受賞した息子の貴幸くん

 

お父さんの明則さんと

 

 

受賞した畳表

 

 

全国の畳屋が集まる藺草の聖地、熊本県でのセミナーの内容とは?

品評会と同時に開催された『畳店様の課題を解決するセミナー』が二日間に渡ってありました。

若手農家さんが製織した畳表を見学させてもらい、エンドユーザーと繋がっている畳屋目線で意見交換をしたり、農家さんの栽培方法やSNSを活用した一般消費者への情報提供など、私にはまだまだ足りない部分が多いと気付かされるような素晴らしい講義も拝聴出来ました。

他にも若手職人による畳の手縫い実演や売上げアップするために努力している同業者の経営方針など、二日間では通常学べないような内容の濃さに「熊本に行くのは刈取りと植付けだけじゃないなぁ~」と来年以降3回行かなきゃならないカルマを背負う四代目なのでした。

しかし今回のセミナーで1番の収穫は私が通い続ける農家さんの他にも志が高く、次世代の発展が期待できそうだったこと。

また、畳店の中にも非常に意識の高い仲間がいて本来ならばライバルであるのに情報共有や意見交換が活発にできたことです。

一言でセミナーと言うと「良い話聞いた」で終わりそうですが相互理解を深められるような、そんな素晴らしいセミナーだと思い、主催者や関連スタッフの皆さんには大変感謝いたしております。

 

今回のブログはお客様と言うよりも同業者や関連業者に向けての内容も多く、当店の良さには繋がらなかったとは思います。

しかし、このような記事を読んで一人でも多くの畳店さんが勉強会に参加してくださることは、多くの一般エンドユーザーであるお客様に確かな説明とサービスの向上が期待できると私は考えます。

どうか農家さんが必死に織り上げた畳表を土足で踏むような畳店ではなく、畳を大好きでお客様にも好きになってもらおうと努力する畳店にご依頼ください。

 

今回貴幸くんが受賞した畳表は当店に融通していただきました。

前述の通り普段から製織した畳表が受賞しましたので、当店には同レベルの在庫が豊富にございますため、お気軽にお問い合わせください。

その際は欄外のLINE公式が大変便利です。

 

 

東京都北区で四代110余年

有限会社 八巻畳工業

四代目 八巻太一