Table of Contents
襖や障子を外そうと思って上に持ち上げ下側を手前に引っ張っても、敷居(しきい)や畳に引っ掛かって外れないということがありますよね。
ほとんどの場合は古い家で『鴨居(かもい)』という上側の木材レールが自重で垂れ下がり、襖や障子の上桟とその上の溝との距離が狭くなって外せなくなります。
また、場合によっては畳が敷居より高く、引っ掛かって外せないという場合もあります。
今回は外れない障子の外し方と、その障子の上桟を削って簡単に取り外しできる方法を解説していきます。
あくまでも『必ず外せる』という訳ではないので、頑張っても外せない場合は無理せずプロに依頼してください。
襖や障子が外せなくなる鴨居の垂れ下がりはなぜ起こるのか?その特徴とは?
昔の腕の良い大工さんなら『鴨居は垂れ下がってくるもの』と下がりにくい工夫をして家を建てたようですが、現在のように出来るだけ安価に家を建てる工法では鴨居が家の経年とともに下がるのは当たり前のようになってきました。
具体的に言うと鴨居は木材に溝の付いた上側のレールで、下側レールの敷居と違い宙にぶら下がっている状態になります。
鴨居とその溝
障子2枚程度の開口であれば約180㎝くらいですのでまだマシですが4枚分となると約3m60㎝と開口部が大きい分だけ長い木材を使用しますよね。
その場合は真ん中部分に『吊り束』という角材を入れて鴨居を吊り上げてあります。
鴨居(障子)の上にある短い柱部分が吊り束
まずこの吊り束が無い場合は確実に鴨居が垂れ下がるのですが、実はあっても2階の重みなどで落ちてくることもあります。
障子2枚分の約180㎝幅でさえ垂れ下がってくるので当然なのですが、これを後から解消するには大きな工事が必要となります。
現実的に考えて大工事をするよりも建具(襖・障子)を小さく削った方が小労力で簡単なのはご理解いただけたかと思います。
またよほど家が傾いていない限り垂れ下がるのは鴨居の中央部分です。
両端は柱に支えられていて垂れ下がりません。
動かない!外れない!襖や障子を素人でも外す方法とは
我々プロであれば鴨居用の『ジャッキ』があるので問題ないのですが、一般の方であれば鴨居を持ち上げるというのは相当ハードルが高いと思います。
畳が敷居よりも高く引っ掛かる場合は畳自体を引き上げるという方法もあります。(基本的に畳の厚みは薄くできません)
鴨居用のジャッキ
敷居より持ち上ってしまった畳
畳に引っ掛かった様子
・最初にやってみる事
まず試してほしいのは障子を指が入る程度まで左右どちらかに寄せ、両手で持ち上げて下側を手前に出してみます。
前述の通り鴨居は真ん中が垂れ下がる特徴がありますので、右がダメなら左からという感じで左右試してみてください。
これで外れない多くの場合は両サイドは下側が外れそうなのに、真ん中部分がどうやっても引っ掛かるという現象です。
また鴨居の溝に対して障子の上側がほとんど隙間ない場合などは絶対に外れません。
鴨居の溝に十分隙間がある状態
持ち上げて下側を手前に引き出す
・次に試してほしい事
鴨居は真ん中が垂れ下がるので解決方法としては鴨居中央を持ち上げるしかありません。
二人いれば一人が鴨居中央を持ち上げて、もう一人が端の方から襖や障子を取り外す方法を試してみましょう。
少し下がっている程度ならこの方法で外れることもあります。
・上記を試しても外れない場合
こうなると道具に頼るしかありません。
とは言え本職でない限り専用の道具はないでしょうからホームセンターで揃うものをご提案します。
1 敷居から鴨居までの距離より気持ち短めの太い木材
敷居から鴨居までの距離より短いと届かないのでは?と思いますが、直接突っ張らせると敷居や鴨居が傷みますので当て物をします。
そのため、その当て物分の長さは小さくないといけません。
簡単に手に入り加工しやすいので木材としましたが、強度面でいえば鉄パイプが最適です。
木材を使用する場合は割れたり裂けたり曲がったりするのを防ぐため、できるだけ太い物が良いです。
2 傷んでも良い古本やかまぼこ板
前述のように突っ張らせる木材の上下に当て物として使用します。
文庫本や木の板カーペットの切れ端など、ある物で代用できますので購入する必要はありません。
厚めのゴム板も食い付きが良いのですが後程の作業である程度滑らないと使えませんので、使用するなら上側の片方だけで下側は滑りの良い素材にしてください。
3 トンカチ・ハンマー
持っていれば購入する必要はありません。
ただ、かなりの力を入れて叩きますので大きめの物が良いでしょう。
・使用方法と注意点
上下に当て物をして木材を突っ張らせた時の角度は『やや斜め』になるよう当て物で調整してください。
角度が深すぎる(木材が斜め過ぎる)と突っ張りませんし、浅すぎる(木材が垂直に近い)と少ししか突っ張らないので鴨居を十分に上げることができません。
最初は垂直に立てた時の10㎝程度ズレた位置で軽く突っ張るように設置すると良いかもしれません。
鴨居(上側)の当て物(足りなければ2冊にする)
敷居(下側)の当て物
横から叩いて垂直に近付ける
今回はある物で解説をするため細い角材を使用していますが、この程度では細くて危険ですので必ず太い木材を使用してください。
無理に鴨居を上げ過ぎると壁のひび割れなどを起こすことがあります。
あくまでも無理をせず自己責任の元にお試しください。
なんとか外した障子の上桟を削る方法と必要な道具とは
どうにか外せた建具(今回は障子)ですが、このままでは必要な時に外したり元に戻すのが大変ですよね。
解決方法として障子の上側の桟を削って小さくします。
障子両脇の縦桟が上で出っ張っている場合はノコギリで出た部分をカットするだけで楽なのですが、写真のように最初からその出っ張りが無い場合は横に伸びた上桟も削らなければなりません。
※削るのは必ず障子の上側で絶対に下側は手を付けないようにしてください。
ツノが出ていない
1 縦桟の上側を両方切り落とす。
まず最初に両サイド上側の縦桟をノコギリでカットします。
カットする長さは鴨居の下がり具合によるので厳密には言えませんが、大きくカットし過ぎると後から直すのが大変なので3㎜程度から始めると良いでしょう。
鴨居の溝と障子の隙間が無く全く動かない場合はもっと多めにカットして大丈夫です。
ノコでこの部分を切り落とす
2 前面の角も切る
障子の縦桟は前側に出っ張るような作りになっています。
この鴨居溝からはみ出す部分も鴨居に当たるので先程と同程度切り落とす必要があります。
ノコギリで垂直方向、水平方向の順番に切りましょう。
切る長さは最初と同程度
水平方向
3 面取り(角を削る)
切断面が90度でも鋭角な角はちょっとしたことで欠けて木を痛めます。
そのため角に対して45度の角度でノミや刃物を使用して面取りという角を削る作業をしましょう。
実はこの作業が一番切れる刃物を必要とします。
ノミによる面取り
角が取れている
4 上桟のカンナがけ
この作業が一般の方は一番ハードル高いと思います。
まず定規を上桟に当てて真っ直ぐかどうか調べてみてください。
定規は真っ直ぐな物であれば何でも代用できます。
出っ張っていたり凹んでいれば出っ張っている部分を平らに削る必要があります。
定規を当てる
カンナはプロが使用する本格的な物は無くても大丈夫です。
プロ用は刃の出し方や引っ込め方による微調整が難しく、買っても思ったようには切れないと思います。
また切れなくなった刃を研ぐのは更に難しく熟練の技術がいるので、無理せず木製ではない替え刃が使えるカンナをお勧めします。
プロが使うカンナ
替え刃用のカンナ
電動の丸ノコなど持っている方なら一気に切断出来て楽そうですが、切り口も荒れませんし3㎜程度削るのにはカンナの方が早い気がします。
具体的な作業内容としては定規を使って削りたい部分に線を引き、その線のところまでカンナがけします。
その時に自分の癖が出ますので鉛筆で黒く塗って、どの面に刃が当たっているか確認すると良いかもしれません。
鉛筆で塗っておく
カンナで上桟を削る
真っ直ぐに通っているかどうかを定規で何度も確認しながらやると失敗せずに仕上がります。
忘れがちですがプロは障子に納まる位置を縦桟上面に書きます。
今回は前回の職人さんが書き残した「ドーロ側」という文字を削って消したので、同じように書いておきました。
確認が大事
最初に切った縦桟と同程度になるまで削る
道路側ではなくドーロ側
こんなにカンナくずが出ました
外した襖や障子の正しい納め方とその理由
ここまで試したら改めて鴨居と敷居に障子を納めます。
やり方は外した時と同じように鴨居(上側)の溝に上桟を入れて、下側を押し込み敷居の溝に乗せます。
襖でも障子でも建具には納める時のルールがあり、2枚の引き戸(引き違い)であれば必ず右側が自分から見て手前にきます。
例えば押し入れの2枚引き違いであれば左に引手のある襖から納め、次に右に引手のある襖を納めるといった感じです。
4枚の引き違いに関しては真ん中合わせが手前で両端が奥になります。
しかしその4枚に対して2枚2枚で真ん中に柱がある場合などは2枚ずつ右が手前になるように納まります。
ややこしいですよね・・・。
傾きや襖同士の隙間を防ぐためにできれば正しい順序で納めることをお勧めします。
詳しくはこちらをご覧ください↓
まとめ
今回の内容は以前軽い気持ちで投稿したブログがあまりにも高評価で、その内容をブラッシュアップしたものになります。
私自身も様々な現場に立ち会い試行錯誤し、まだまだ修業の身です。
そのためこのような事例でお悩みの一般の方に少しでも参考になればとこの記事を書いています。
出来るだけお金を掛けず自力で解決したいという気持ちは本当に分かりますし、実際やってみないと分からないことも多いですからね。
上記の方法を試してみても上手くいかない場合はお気軽にご相談ください。
解決策としては鴨居用のジャッキを持っているプロに依頼するのが1番です。
それを言ってはお終いよと言われそうですが正直な話、やったことのない人がホームセンターとは言えお金を使って時間と労力を費やすよりも、プロに相談した方がよっぽど楽なのは言うまでもありませんよね。