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霞が関にある農林水産省の1F玄関ロビーには組み立て式の茶室があります。
直射日光の当たる場所ではありませんが畳は経年により退色し、花瓶の水と思われる染みが目立っていました。
そのためご依頼を請け、当店で畳の表替えをさせていただきましたので記事にいたしました。
張り替え前の茶室
張り替え後の茶室
茶室二畳台目の表替え 一畳職人のささやかな挑戦
お茶室の畳というのは歴史が古く、非常に細やかな手仕事が要求されます。
茶器を置く場所などは畳の目幅を基準としていますし、流派や作法によって無視できない大変重要なポイントとなります。
今回の茶室は炉が切っていないため正確に2畳台目と呼んで良いのか分かりませんが、実際にこの場所でお茶を点てることもあるそうなので、一畳職人としていい加減な仕事はできず3畳という少ない畳数でもプレッシャーはそれなりにありました。
今回は表替えという【畳の表面になる畳表と縁を新しくする】作業です。
そのため敷いてある既存の畳の寸法を変えるわけにはいかないので、【畳寄せ】と言われる木枠と畳の間に出来た隙間を埋め、組み立て式ということもあり素人の方でも簡単に畳を剥がせるように、隙間が気にならない程度の微妙な寸法で仕上げさせていただきました。
隙間は斜めに大きなところでは4㎜程度ありましたが、畳表(ゴザ部分)を剥がしてなだらかにゴザや厚紙を足して隙間を埋めます。(普段当たり前に作業しているため写真を撮り忘れました)
【素材】熊本県産京間サイズの畳表の品種と純綿黒縁大目切りでの仕事【技術】
お茶室の畳と言えば京間サイズで昔は64目といって畳の目が64本連なる畳表だったそうですが、農水省の組み立て式茶室の畳は関東間で京間に比べると少し小さいサイズです。
64目の畳表や水を弾く天然藺草(いぐさ)を使用した撥水表もありますが、予算の関係で今回は関東間サイズの畳に少し大きい京間サイズの畳表を使用させていただきました。
この畳表の特徴としては縦糸に麻と綿の糸を使用し【ひのみどり】という種の藺草で織り上げてあります。
品種改良された藺草には種別がいくつかあり、ひのみどりの他には最近品種改良された温暖化に強く太く成長する【涼風(すずかぜ)】や、原種に近いとされる【在来種】【ひのはるか】【夕凪(ゆうなぎ)】など他にもあります。
私が畳屋になった頃は【岡山3号】が一番多かったように記憶していますが、地球の温暖化や産地の推移によって藺草も品種改良が進んできました。
ひのみどりは特徴として細いのですが草自体が均一で色ムラが少なく、見栄えの良い品種と言えます。
こだわった点としては、通常一般家庭の畳であれば隣り合った畳同士の目幅のみ綺麗に1本縁と平行に出るよう作成しますが、その1本をギリギリで出そうとすれば少し畳目の谷と呼ばれる溝部分がチラついてしまいます。
そのため縁を少しだけ畳目に被せるように作るのですが、茶室の場合は谷のど真ん中に縁が来る【大目切り】という方法が用いられます。
今回は表替えなので土台である畳床(たたみどこ)の寸法を勝手に変える訳にはいかず、微調整で何とか畳の両サイドを大目切りで仕上げることができました。
畳縁(たたみべり)は国産の純綿黒縁の中でも最高級である、生地が特別厚い物を使用してあります。
この辺のところは一般人の方が見ても全く分からないと思いますが・・・。
真ん中の畳は両サイドに畳目がくっきり出てる
茶室の見学だけではなく、農林水産省食堂は一般の皆様も気軽にお越しいただけます
一般の方には敷居が高いと感じる農林水産省ですが、正面玄関で入館手続きをすればどなたでも入館ができます。
農林水産省の建物内には働く人々だけでなく、一般の皆さんも気軽に利用できる1Fろびーにある茶室以外にも素晴らしい施設があります。
それが、農林水産省の食堂です。
農林水産省食堂では、国産の新鮮な食材を使用したバラエティ豊かなメニューを楽しむことができます。料理は、季節により変わり、日本の農業や漁業が提供する素材を最大限に生かしています。
一般の皆さんも、事前の予約なしに、気軽に訪れて昼食を楽しむことができます。
また、食堂内部は開放的で落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした時間を過ごすことができますよ。
忙しい一日の中で少しリラックスして、美味しい食事を楽しむのに最適な場所です。
一度、農林水産省の食堂を訪れてみてはいかがでしょうか?きっと、その魅力に惹きつけられることでしょう。
私たち畳職人と同様、食堂のスタッフも一皿一皿を丁寧に作り上げています。
それは、私たちが畳を作るときの姿勢と同じです。
一般の皆さんが農林水産省の食堂を訪れることで、私たちの仕事や日本の農林水産業への理解が深まることを願っています。
食堂について詳しくはこちら↓