前回、予防や対処法をご説明しましたが、防虫紙では絶対に対処できない虫もいます。

前回の内容↓

【半永久的に効く】ダニや畳の下にいる虫にホウ酸を使用した人体に無害な畳用防虫紙【下敷き編】

 

『トコジラミ(南京虫)』と言って近年外国人旅行者が持ち込み旅館やホテルで大問題になっている虫です。

トコジラミは日中物陰に潜み、夜になると寝ている人間に喰いつく厄介な虫です。

時折{畳}が悪者扱いされますが、この虫に関しては隠れる場所があればどこにでも潜みます。

結論から言うと「トコジラミかも!」と思ったら駆除業者を呼ぶか、冬まで耐えるしかありません。

駆除自体が衣類の廃棄など大変な上に、除去作業は高額です。

駆除業者でも完全に駆除するのは難しいそうなので、覚悟がいると言えそうです。

 

過去何度か対処してきた私の経験上、駆除業者に頼らず自己責任でやるなら効果があるかもしれない方法を記します。

しかしこれは机上の空論なので、真似して上手くいかなくても参考程度と捉えて見てください。

 

トコジラミ

 

 

1 トコジラミとは

簡単に言うと5~7mm程度の上から見ると丸い形をした虫で、吸血前と後では形が変わるので注意。

吸血前はカメムシのように平たい形をしているが、吸血後はパンパンに膨れて赤黒い色をしている。

明かりを嫌うので主に夜になると寝ている人の体から血を吸う。

日中の明るい環境では部屋の中にある、ありとあらゆる隙間に潜んで暗くなるのを待っている。

畳の隙間や柱の隙間、襖の桟(木枠)の上、布団の下、段ボールの断面など暗い隙間は全てが虫の温床になる可能性を疑った方が良い。

詳しくはこちら

 

※以下画像は『環境機器 株式会社』さん提供

 

畳の隙間に潜んでいる

 

人間の血を吸って増える

 

 

2 発生原因

元々日本にいる虫ではなく海外から旅行者や荷物に紛れて来ている外来種。

そのため安ホテルや簡易宿泊所で刺される日本人が多いが、カバンの中などに入ったトコジラミを持ち帰ってしまい、家で大量発生させてしまうという悲劇が続いている。

また中国や台湾などから輸入された段ボールによって持ち込まれることもあるため、輸入品を扱う会社で働いていた人がトコジラミを自宅に持ち帰ってしまった例もあります。

調べると寒い環境でも死なないと書いてありますが、日本で爆発的に繁殖していない状況を見るに越冬はかなり稀な例だと思います。

大量発生時にはトコジラミの糞で確認ができます。

トコジラミは血液を吸って糞を排出します。

そのため部屋の角に赤黒い染みがあった時に私はトコジラミを疑います。

和室であれば鴨居(かもい)や長押(なげし)の角下側が分かりやすい場所になります。

経験上人間の目線よりもやや上の方が染みていることが多く、その染みが分かる程度にある時点で相当多くのトコジラミがいると思って間違いないでしょう。

簡易ホテルなどに泊まる際は一つの目安としてください。

 

糞の跡

 

 

3 症状

昔はトコジラミの事を『南京虫(なんきんむし)』と呼んでいて、噛まれると近くに2箇所噛み跡ができると言われていました。

しかしトコジラミ自体は非常に小さな虫ですから2箇所喰われるとしたら相当大きな顎が無いと無理ですよね?

現在では2箇所同時に喰われるといった説は無くなっています。

 

大事なことですが虫刺されでトコジラミの存在を知らない人は必ず「ダニに喰われた」と思います。

生息数によって違うので一概には言えませんが、ダニの場合は衣服から露出した部分もしていない部分も喰われるはずで、トコジラミはほとんどの場合が腕や足など露出部分です。

相当多くの数がいない限り喰われた痕は点々としてそれほど密集しません。

個人差はあるとしてポツンと喰われた箇所が日に日に痒くなり、2日目以降は睡眠に支障をきたす程の痒みになります。

これは少なくとも1週間は続くので本当に辛いですし、最初に血を吸ったトコジラミが繁殖までしていると新たに喰われて何カ月も同じような状況が続いてしまします。

私の経験上、似たような症状で蚤(ノミ)に喰われた時も同じようです。

あまりの痒さに皮膚を搔きむしって血だらけになった過去があります・・・。

掻いてはいけないと思い我慢するのですが寝ている時に無意識で搔いてしまう上に、掻いた後に目が覚めて寝られないという二重苦が待っています。

畳屋という職業上、若い頃は無知だったので家にトコジラミやノミを持ち帰ってしまい大変な目に遭いました。

現在は持ち込まない知識と耐性が付いたのか人よりは痒みを感じなくなりました。

これは被害者の人もそうなのですが、何カ月も喰われ続けると最初よりも痒みがマシになるので冬に落ち着くまで放置しがちです。

同居の家族に迷惑をかけることは勿論、集合住宅などの場合は隣接する住人にも被害が及ぶ可能性がありますので、自分が大丈夫になったからといって安心はできません。

 

 

4 駆除業者と殺虫剤について

何度も言いますがトコジラミ対策は駆除業者に依頼するのが一番効果的です。

専門知識のあるプロに依頼して駆除すれば時間も掛からないのでストレスも減ります。

また殺虫剤の種類は色々と効く効かないが議論されていますが、ゴキジェットプロで効かなければ、どんな虫でも諦めるしかありません。

バルサンなど煙タイプの殺虫剤も隙間の奥に潜んだ虫には効果を発揮しにくいので、噴射式と併せて使用した方が効果があると思います。

※同時に使用した場合の人的被害は未知なので、必ず片方ずつ吸引しないように併用してください

 

とは言え誰もが高額な駆除業者に依頼できる訳ではありません。

私が記述しているのはあくまでも自力で最善を尽くす方法であり、これにより完全駆除ができるとお約束するものでもございませんので試す方は自己責任でお願いします。

 

 

5 駆除方法

 

1 作戦決行日を決める

数日に渡ると効果が薄れるので最初の戦いは1日で短期決戦する。

1日目で完全駆除は難しいので面倒ですが継続して駆除する必要があります。

 

2 トコジラミを一つの部屋に集中させる

発生場所の部屋だけ暖かい状態にして虫を集める。

通常トコジラミは寝室に集中しているので、一人暮らしや同居人と同じ寝室の場合は他の部屋に発生していない限り寝室で作戦を決行する。

寝室が他にもあって、その部屋でも被害がある場合は同じことを同時に2箇所ですること。

他の部屋や廊下はできるだけ冷やしておくこと。

 

3 虫の移動を避けるため、居住部屋(寝室)は発生した部屋のみとし、各部屋への物の移動も控える

虫の付いた衣類などを他の部屋に移動すると、駆除するべき部屋が増える。

ありとあらゆる隠れられる環境に虫はいるので物の移動は絶対に控えること。

 

4 喰われたついでに余計なことはしない

どうせ喰われてますから中途半端に殺虫剤を撒いたりせず、決戦日まで耐え忍ぶ。

他の部屋に移動される方が厄介。

 

5 発生部屋(寝室)で夜に決戦

虫が出てくるのは暗くなってからなので、自分を餌にして潜んでいる虫を全て自分に集中させる。

1時間から2時間程度、暗い環境で耐え忍ぶ。

トコジラミは人間の体温や吐く二酸化炭素に反応して集まる習性があるため、暗闇でも勝手に近づいてくれます。

これ以上喰われたくない場合は処分しても良いシーツなどで全身を包んで耐え忍びましょう。

 

6 部屋を明るくして至る所に殺虫剤を散布しまくる

ゴキジェットなど強力な殺虫剤を部屋中(押入れやクローゼット内も含む)に散布する。

エアコンや電化製品の隙間という隙間にも潜んでいるのでかけまくること。

コンセントの差込口などは念のためブレーカーを落として散布してください。

 

7 着ている服を全てゴミ袋に入れて殺虫剤を散布してから密閉

布団は大きいので布団圧縮袋に入れて同様に散布して密閉する。

卵の状態で薬剤が効かない可能性もあるので、基本的に衣類は全て廃棄する。

洗濯して干せば効果があるかもしれないが、リスクが高いので廃棄を勧める。

上記全ての作業が終わってしばらく部屋に入らない状況ができたらバルサンを焚いて部屋を密閉。

 

8 シャワーを浴びる

体を拭くタオルや衣類は袋から開けたばかりの新品が望ましい。

その日は発生源の部屋からできるだけ離れた部屋で過ごすこと。

カバンなどに潜んでいる場合は虫を移動させてしまうので、発生源の部屋からは何も持ち込まない。

どうしても移動させたい物がある場合は殺虫剤をかけるか、カバンの中身などは良く払って卵など無いように気を付ける。

 

9 数時間後に発生源の部屋を換気

バルサンの説明をよく読み、部屋の密閉時間を指示通りにする。

使用時間経過後、窓のみを開け扉は開け放たないこと。

ついでにダメ押しで殺虫剤を撒いて、生き残りを外に逃がす。

自分はもうしばらく避難。

 

10 この作業を完全に駆逐できるまで繰り返す

プロに頼らず自力でやるならこのくらいはやらなければならない。

 

 

6 まとめ

自力で完全駆除の難しい所はプロの目線とは違うといったスキルの部分は勿論だが、物の移動などで「これくらいは大丈夫だろ?」とか「これは捨てたくないから残しておこう」などといったように甘えが出る点だと思う。

もちろん素人なのでそんなの仕方が無いのだが、その場合は長い戦いを覚悟しなければならない。

とは言え絶対数を減らすことには変わりがないので、今まさに苦しんでいる方には実践してもらえれば良いという程度で理解いただきたい。

絶対数が減って良い点は飢餓状態でないトコジラミが明るい環境でアクティブに喰いつきに来ない点であると思う。

要するに上記を実行した後はアイマスクをして部屋を明るくしたまま寝れば、以前のように体中喰われるというリスクが減ると考えられるからだ。

このタイミングで新しい寝具を使っても撲滅していない限り無駄になるので、時間に余裕がある人は洗濯できるものは洗濯し、出来ない大物は干してから掃除機で徹底的に吸い取るなど地道な作業も効果があるかもしれない。

しかし掃除機に溜まったゴミの中には虫や卵がいるので、毎回綺麗に出してビニール袋に密閉して出すなどすること。

あの痒みは経験した事のある人間にしか分からない地獄であるし、もう二度とあのような状況にはなりたくないと思いこの記事を書いている。

1人でも多くの困った人が助かれば本当に幸いだと思います。

最後にくどいようですが、トコジラミは専門駆除業者に依頼するのが一番!

駆除作業が終わったら畳を新しくして隙間を埋めて、虫に強い和室環境にしましょう。

 

 

東京都北区で四代110余年

有限会社 八巻畳工業