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通い始めて9回目となる藺草(いぐさ)の刈取りですが、今年は例年と一味違った作業になりました。
国産畳表の9割以上を占める熊本県八代市産藺草ですが、高齢化や後継ぎ不足に和室の減少が拍車をかけ、毎年1割程度の農家さんが廃業しています。
今後V字回復は見込まれないため、現行の農家さんに1軒でも多く残ってもらう事が畳屋にとって大事なことになります。
しかしなかなかお手伝いに行こうという畳屋さんは増えないですね。
私と一緒に行っている畳屋さんは全員皆勤賞で、最近では後輩から指示を出されて動いています・・・。
藺草刈りの手順と工程はいかに無駄なく効率的に動けるかで決まる
昨年から農家さんに導入された乾燥機システムは、藺草の束を一つ一つ並べるのではなく、コンテナごとにホークリフトで移動するようになり、体も楽になったし作業時間が大幅に短縮されました。
昨年の刈り取りでは乾燥機システムを導入したてに行ったので朝3:30起きとキツかったのですが、作業の流れが構築され今年はなんと朝6時起きで許されました!
全然違いますよね。
朝起きて最初にすることは朝食です。
僕もまさか?と思ったのですが作業前に朝食が取れるなんて夢のようでした。
朝食後は昨日乾燥させておいた藺草を袋詰めしていきます。
この際、余分に付着した土を落とし、決まった数を袋に詰め、それを2階の倉庫へ運びます。
乾燥した藺草
マスクは必須
一旦休憩後、今度は昨日刈り取って染土に浸けておいた藺草を乾燥窯にコンテナごと移動し、明日の朝まで乾燥させます。
前日に刈り取った藺草
次の作業は田んぼに行って藺草が倒れないように張ってある網を剥がします。
両サイドから引っ張り合って網を外していき、杭を抜いて回収して持ち帰ります。
網を剥がす
杭を抜いて運ぶ
ここでようやくお昼休憩。
私が行った時は曇りか小雨だったので、昼食後は短い休憩ですぐに午後の作業に取り掛かりました。
午後一の作業は藺草の刈り取りと、刈り取った藺草の束を染土に浸ける作業です。
刈り取って
トラックへ積む
システムと言ってコンテナごと泥水に浸ける方法もありますが、私の通う吉田家では一束ずつ浸けて取り出し、一束ずつコンテナに並べていきます。
泥染め
刈取りも昔は人が鎌で刈り取っていたそうですが、現在ではハーベスタという専用機械で刈り取ります。
田んぼで刈り取ってトラックで運搬し染土に浸けてをひたすら繰り返して、夕方になると一日分を刈り取って作業終了です。
ハーベスタ
一昨年は朝3:30起きで作業終了が20:00でしたから、そう考えると本当に体が楽になりました。
とは言え重労働には変わりませんので足の裏や背中、腰が張って疲れは溜まります。
この作業を休みなく1か月以上続ける農家さんには本当に頭が下がります。
吉田家の藺草はここが違う!残留農薬の無い畳を当店が扱える訳とは
藺草農家の吉田家では「畳は直接肌に触れるものだから」という理由で、除草剤や農薬を極限に減らし、育った藺草からは残留農薬が出ないように栽培しています。
そして毎年検査機関に藺草の残留農薬を測ってもらい、全て安全な特定栽培農産物に指定された畳表を出荷してくれています。
この残留農薬ゼロですが口で言うほど簡単な事ではなく、除草剤や農薬を初期散布のみにしているため、刈取りの頃は雑草が多く生えて害虫による食害もあります。
具体的には雑草が多いと土の栄養分も奪われ収量も減ります。
また藺草の芯を食べる蛾の幼虫により、これまた藺草の収量が減ってしまうのです。
実際に刈り取っていて混入する雑草の多い事・・・。
芯を食われて枯れ(変色)している藺草も多くあります。
しかし吉田家では安全性を最優先しているので苦労して雑草を手で抜きながら笑顔!
信頼できる本物の農家さんですね。
雑草を抜く吉田さん
他にも用水路に水草や小魚、シジミがたくさんいて水が綺麗であることが立証されています。
綺麗な水で育つ藺草は勢いよく育ち、今年も全体的に不作と言われていましたが吉田家は抜群の収量でした。
用水路の掃除で出たシジミのカラ
安全安心な畳を求める消費者のために畳屋ができること
私は11年前から熊本県に通い吉田さん宅で寝食を共にしながら、藺草の刈取りと植付けをお手伝いさせてもらっています。
仕事を休んでまで通う理由は残留農薬の無い藺草や畳表を安定して供給してくれる吉田家の「一助になりたい」からです。
熊本から送られてきた畳表を使って畳を張り替えるだけではなく、藺草一本一本に物語があり、それを消費者に伝えることが出来る畳屋を目指してやってきました。
継続は力なりという言葉を実践し産地と消費者を繋ぐ畳屋でありたい。
そんな気持ちで熊本県へ通い続けています。
畳替えはどこの畳屋に依頼しても同じではありません。
それは藺草もどこの農家でも同じではないことと一緒ですよね。
安全安心の畳は当店にお任せください。
お問い合わせはLINE公式が便利です。
ご質問などもお気軽にお聞きください。
作業後の私と吉田さん