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大変ご報告が遅くなりましたが今年2度目の熊本県八代市へ行ってまいりました。
7月は畳表の素材である藺草(いぐさ)の刈り取り作業のため。
今回は来年の7月に刈り取り予定の藺草を株分けして分割し、ポットに植えていくという植付けの準備作業でお邪魔しています。
苗を分割する理由は単純に増やすためです。
単純作業ですが非常に手間が掛かり、元気な苗だけを選んで選別するなど経験値もそれなりに必要となります。
10年通うと手が高速になります
藺草(いぐさ)ポット苗の時期とスケジュール
藺草農家では田んぼへ藺草の苗を植え付ける作業は寒くなる12月頃行うそうです。
そのため私がお手伝いに行った9月の終わりから10月の中旬までポット苗という、藺草を分割し増やすという作業が必要になります。
ポット苗を赤ちゃん藺草だとすると9月の終わり頃に増やしてポットで育成し12月頃に本格的な植付け。
この頃はまだ子供藺草ですが翌年の夏には立派な大人藺草となって刈り取られ、泥染めや乾燥などの作業を経て保管されます。
その保管された藺草は10月頃から織機によって畳表となり、翌年の10月頃まで製織作業後に畳店へ出荷されるという訳です。
そのため赤ちゃん藺草から畳表になってお客様宅に敷かれるまでは、約2年という歳月が掛かるということですね。
田んぼに並べられた赤ちゃん苗(ポット苗)
藺草ポット苗の作業手順と地味だけど育成にかかわる大事なポイント
毎年書いているので毎回同じような内容になってしまいますが、まず最初に畑から成長している途中の藺草を掘り起こしてきます。
掘り起こされた藺草の株(手前)
その藺草はある程度密集して育っていますので大まかに分割し、更にその株を細かく分割していきます。
親芽二つに新芽一つが基本
基本は親芽2本に新芽が1本ですが、植物なのでそう上手くはいきません。
そのため新芽が1本あれば親芽の数が3本~4本になることもありますし、親芽2本に対して新芽も2本などバリエーションは様々です。
ハサミで切って分けていく
この時に大事なことは木化したような硬くて古い株は全て捨てる事。
また株が大きいとポットの穴に入らないのですが、親芽1本しかない株も成長が困難になる場合があるので捨てます。
この穴にすんなり入る大きさの株にする
分割作業とポットに刺す作業は分業していますので、分割は分割専門のパートさんに依頼し、刺す作業は農家さんが行うというのが多いパターンのようですね。
私たち助っ人畳店は両方をやりますが、どちらの作業も椅子に座ったまま行うので首から背中や腰まで、何度お手伝いに行っても非常に疲れます・・・。
刈取りと違い朝は6:00からと遅い?のですが、夜は22:00頃まで途中休憩を挟みながら作業は続きます。
ポットに刺した赤ちゃん藺草の行く末とは
1つのパレットに320個の土が入る穴があり、そこに刺された藺草はパレットのまま田んぼに移動されます。
田んぼでは綺麗に並べられたポット苗が並び、土に根を張ってぐんぐん育成して大きく伸びていきます。
その後は根を切って田んぼから剥がし、夏に刈り取る田んぼへ再度植え付けていきます。
農家さんは水の調整や肥料など植えた後も大変ですが、更に藺草が伸びて倒れてしまわないように網を張って成長に合わせて上へ上げる作業などもあります。
田んぼに並べられたポット苗のパレット
畳屋が重労働でも毎年2回も熊本へ行って農家さんのお手伝いをする理由とは
農作業から製織までしている農家さんに対してお手伝いというのはおこがましいのですが、10年も通っていると戦力として認められエンドユーザーを抱える我々の意見も育成や製織作業に少しは影響してきているようです。
私は国産専門店を名乗り「この農家さんの育てた藺草が欲しい!」という思いから通い続けています。
そのためには安定した供給は不可欠で「何でも良いから国産」は簡単ですが、信頼関係から繋がる安全性の高い素材の仕入れは必須だと考えています。
事実、私が通う吉田家の藺草は特定栽培農産物に指定されている、残留農薬検査で【農薬不検出】を毎年測定値のデータを公開してくれています。
畳を使用してくださるお客様の喜ぶ笑顔と健康が私たち畳屋の励みであり、一番嬉しい事でもあるんですよね。
でも一人では続けられなかったと思います。
続けてきて心から思うのは一緒に汗を流し、寝食を共にする畳屋の仲間たち。
一人も欠けることなく毎年通い続ける仲間に支えられて今があります。
普段は照れくさくて言えませんが、心からありがとう。
藺草農家の吉田さん親子と仲間の畳屋さん
これ1人分です
先に寝てはいけない理由