過去に自宅の畳を新しくしたことのある人なら納品直後に畳屋から「雑巾で水拭きしてください」と言われたことがある人も多いのではないでしょうか?

そもそも新しく綺麗になった畳をなぜ雑巾がけしなければならないのか。

やったことのある人でも理由を知っている人は少ないと思います。

今回はその雑巾がけの意味と、現在では多くの場合やらなくてよくなった理由を解説していきます。

 

雑巾で拭き上げ

 

 

新しい畳なのに汚れている?新品の畳に付着している【染土(せんど)】って何?

多くの畳は表面に天然藺草(いぐさ)を織り込んだ【畳表】が張り付けてあります。

藺草は植物ですので農家さんが田んぼに植えて増えてから収穫する訳ですが、収穫の事を『刈取り』と言うように根本から刈って束にし、乾燥して製織するまで保管します。

その際に刈取り直後の藺草を土を溶いた水(泥水)に浸けてから乾燥させるのですが、この作業をした場合としなかった場合で出来上がった畳表の品質は大きく変わります。

この泥水に浸けてから乾燥させた藺草は保管期に退色しにくく、畳独特の良い香りがするようになります。

逆に刈り取ってそのまま乾燥させた藺草は牧草のような香りがするのが特徴で、畳表になった際に表面が滑りやすくなります。

所説ありますがその昔、藺草を刈り取った直後に洪水で泥だらけになった藺草を乾燥させて畳表にしたところ、良い香りがしてその後にこのような作り方が一般的になったと言われています。

そのため新品の畳表には【染土】または【イ泥】と呼ばれる天然の土が付着していて、そのままですと靴下などの衣類に白い粉上の土が付いてしまうので、過去には拭き上げをお客様にお願いしていました。

 

泥染(どろぞめ)の様子

 

 

新品の畳をお客様が自ら濡れ雑巾で拭かなくても良くなった理由とは

当店でも数年前までは納品後「畳には泥が付着していますので硬く絞った雑巾で拭き上げてください」とお客様に言ってから帰っていました。

しかしご高齢の方はその『雑巾がけが重労働で畳替えを躊躇している』という方も多くなり、それならばと作製後にこちらで拭き上げて納品するようになった経緯があります。

多くの畳店では拭き上げ仕上げしてから納品するようになりましたが、実は畳店では雑巾がけしている訳ではありません。

畳専用のブラシを使うか、当店のように集塵機を使用して雑巾やブラシよりも綺麗に染土を除去しています。

 

専用のブラシ

 

集塵機で吸い取るタイプ

 

 

過去の畳替えで雑巾がけをしたら雑巾が青くなった!着色している畳店には依頼したくないというお客様

今から20年くらい前になるでしょうか。

技術の向上と仕入れ値の安さから中国産の畳表が国産の畳表を大幅に上回り、更に品質を良く見せるために緑色や青色の塗料を染土に混ぜた着色表というものが流行しました。

中国産が着色をしているだけならまだ良かったのですが、色味の良い中国産に押されていた国内の農家さん達まで着色をするようになり、その時期はどこから畳表を仕入れてもほぼ全てが着色された畳という時期があったのです。

そのためお客様が畳表を雑巾がけすると、雑巾が青くなり畳店は多くの信用を失いました。

そんな中でも着色を嫌い、色味で負けて売り上げが大幅に減少しても信念を貫き通した藺草農家さんが、私の通い続ける吉田さんです。

実際に当店を初めてご利用になるお客様から「前に依頼していた畳屋は着色した偽物を売りつけたからもう頼まない!」といった例を何度も経験しました。

しかし当店でもその当時は着色した畳表しかほぼ流通していなかったので、この件に関しては畳店は同じ被害者であると思います。

 

信念を曲げなかった藺草農家の吉田さん

 

 

自分でやるなら新品の畳は正しい拭き方をするべき!間違うとせっかくの畳がカビだらけになるかも

畳店が拭き上げて納品してくれなかった場合や、拭き上げてあっても自分で仕上げの拭き取りをしたい方はいると思います。

そんな方は是非下記のやり方を試してみてください。

 

・畳の目に沿って、ゆっくりと掃除機を掛ける

畳表に付着した染土は細かい粒子とはいえ藺草にしっかりと付着しています。

そのため掃除機で全てを吸い取れる訳ではありませんが、畳の目に詰まった他のゴミなどを先に除去しておくと良いでしょう。

 

・硬く絞った雑巾で畳の目に沿って拭き上げる

ここで1番のポイントは硬く絞った雑巾です。

水分が多すぎると藺草が濡れて多湿など時季によってはカビが生えてしまいます。

必ず硬く絞ってから拭き上げ、窓を開けるかエアコンで乾燥させてください。

扇風機なども効果があります。

 

・雑巾は綺麗な面を使用する

1畳拭き上げたら綺麗な面に変えるなど、雑巾は同じ面で何度も拭かないようにしてください。

雑巾に付着する灰色の土は天然の土ですので拭き取っても人体に影響はありません。

最後に雑巾を良く洗って完了です。

 

 

東京都北区で四代110余年

有限会社八巻畳工業

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