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普段お使いの和室に入ると、一歩目でなんとなく畳が沈んでいるような感覚や、妙な音が鳴っているなど違和感を覚えることってありませんか?
お客様からのご相談で多いのは「たたみを踏むと沈むのだけど、これは新調した方が良い?」というものです。
畳を踏むとフカフカしたり沈んだような感覚になるのはいくつかの理由があります。
今回は新調した方が良い例と、補修して表替えでも大丈夫な例を挙げて解説していきます。
畳を踏んで沈むのは、畳が原因じゃなかった?よくある事例と沈む場所
当たり前のことですが毎日のように踏まれる畳は永久的に丈夫なわけではありません。
出入り口などの毎回必ず踏まれる箇所が傷みやすいというのは説明しなくても分かると思いますが、畳が新しくても踏むと沈んだりフカフカした踏み心地になる事例がよくあります。
そのほとんどが畳の下地になっている床材が原因です。
床材には大きく分けて{一枚板の荒板}{コンパネ}{パーティクルボードの置床}{発泡スチロールのネダフォーム}{コンクリート}と5種類程度あり、コンクリート下地以外の3種類は経年劣化で耐久性が落ち凹む傾向にあります。
踏むと畳が沈むと思いがちですが、実は畳の下地である床面が沈んでいる可能性がかなり高いのです。
畳の下にある床材は素材によってメリット・デメリットがあるって知ってました?
上記の例だと下地の床材はコンクリート一択のように感じますが、コンクリートにも欠点はあります。
畳をご自分で剥がして下地材が何なのか?なんて調べたことも無いと思いますが、もし畳替えをするチャンスがあれば是非参考にしてみてください。
・一枚板の荒板
在来工法など従来の建築技法で最も多いのは杉や檜(ひのき)を使用した板張りです。
一枚板をほんの少しだけ間を空けて並べて敷く工法で、この板の下には【根太】と呼ばれる角材が90度違う方向に並んで板を支えています。
この板を荒板(あらいた)と呼びます。
因みに根太の下には【大引き】と呼ばれる更に太い角材が90度違う方向で並び根太を支えています。
根太の間隔が狭ければしっかりと荒板を支えられるのですが、広いと逆に支えの間隔が空くので踏んだ時に沈んでしまいます。
メリットは板同士の間隔が少し開いているため通気性が良く、日本の四季に合っている点。
また、程よくしなる板は踏み心地も良く適度な弾力性を発揮します。
デメリットは冬場の隙間風が寒い事と、シロアリなどの被害に合いやすい点です。
・コンパネ
一軒家の和室に最近では最も多いタイプがベニヤ板を分厚くした集積材でできたコンパネです。
薄い木材を何層にも接着剤で重ね合わせた素材で、強度があり加工しやすく多くの和室で床材として使用されています。
メリットは敷き詰めることにより床からの隙間風が無いことと、水平を取りやすいので床ムラが少ないことです。
また安価であるためホームセンターなどでも手に入りやすくなっています。
デメリットは湿度に弱く水分を吸い過ぎると糊が弱くなり薄い板状の木材が剥がれ波打つことです。
木材なのでシロアリ被害も受けやすい点も注意が必要です。
・パーティクルボードの置床
マンションなどの集合住宅に多い材料で木の集積材で形成された硬いボードを板として使用し、柱のように立てた金属を5本束(つか)として支柱にしています。
最近の素材は高強度なため沈みにくいですが、過去に生産されたボードは経年劣化で凹みができやすく、窪んだ部分は畳が凹んで沈む原因になりやすい特徴があります。
メリットは安価なため施工費用が安い点です。
また床下の配線・配管など空間を多く取れる。
デメリットは耐久性に乏しく支柱がずれるとガタガタしてしまう。
・発泡スチロールのネダフォーム
こちらもマンションなどの集合住宅に多いタイプで発泡スチロール製の床材。
約1m角の床材でコンクリート基礎の上にセメントを固めた束(つか)の上に乗っているか砂地に乗せてある。
砂地に乗せてる場合は一度剥がしてしまうと水平に置き直すことが難しく、空いた空間で虫も出やすい。
メリットは断熱素材なので冬でも暖かい。
デメリットは耐久性がないのでよく踏まれる場所は発砲が潰れて沈みやすい。
畳を上げて初めて床材が発泡スチロールと知りビックリするお客様も多いです。
・コンクリート床
やはりマンションなどの集合住宅に多い床で、最近の住宅形式ではフロアーにコンクリートを水平に流し込み、その上にフローリングを張ります。
そのため畳もフローリングの厚みに合わせないと持ち上がって段差になるため、15mm厚などの仕様になることが多いです。
メリットは硬い素材なので良く踏まれる場所でも沈むことは無く、半永久的に床材としての機能を果たします。
デメリットはまず硬いので15㎜厚などの畳だと弾力性が生まれませんので、畳でもフローリングのような硬さを感じます。
またコンクリートの特性上湿気の多い部屋では空気中の湿度を異常に溜め込んでしまい、床下が常に湿っている環境になりがちです。
ひび割れするとその箇所に埃がたまり虫が出やすくなることもあります。
畳を踏むと音が鳴る!その原因は3種類から解決方法を探るしかない
鴬張りなんて言葉がありますよね。
忍び込んだ先で歩いたら、足を踏み込んだ瞬間に音がして敵の侵入を知らせる装置です。
畳のある和室でも同じような現象がよくあり、その原因は大きく分けて3種類に集約されます。
気になるその床鳴りの解決方法を事例別に検証してみましょう。
・畳自身が鳴る場合
20年ほど前から畳の芯材である畳床(たたみどこ)は藁(わら)から木質チップボードに代わってきました。
多くの場合上下に木質チップボードを使用し真ん中の板材は建材用の発泡スチロールでできています。
過去には素材の開発がそこまで進んでいないこともあり、木質チップボードと発泡スチロールが擦れて音が鳴る現象が頻発しました。
現在では改良が進みほとんどそのような事例はありませんが、温度や湿度変化によって「床鳴り(とこなり)」は極稀におこることがあります。
この現象が問題の場合は畳自体を新調するしか手がありません。
・畳の縁が鳴る場合
畳縁(たたみべり)が純綿製の場合は壁側の畳寄せ(たたみよせ)という木材と擦れて音が出てしまうことがあります。
常に鳴るというより時季によって温度や湿度の変化で一定期間鳴る現象で、解決策としては摩擦する部位である側面側の畳縁にろうそくを塗り込むか、クラフトテープを張り付けて滑るようにすれば鳴りません。
どちらにしても畳店に相談して施工してもらった方が良いでしょう。
・畳の下の床材が鳴る場合
私が知る限り畳本体は問題がなく、床材が音鳴りする原因素材となるのは上記の荒板とコンパネです。
荒板の場合は固定するための釘が浮いてしまい、踏まれることによって「ギィギィ」という音がしてしまう事例です。
コンパネでも同じ現象はありますが、釘の浮き沈み以外で多いのは隣り合ったコンパネ同士が擦れて鳴ってしまう事例です。
木が膨らむ湿度の高い時期に多いと思いきや、冬場の乾燥で鳴ってしまうこともあります。
畳の下の床材が音鳴りする場合は畳が原因ではありませんので大工さんのお仕事です。
しかし簡単に直るような作業であれば畳屋でも対応できますので、張り替え時などの時にご相談いただけると幸いです。
まとめ
畳を踏んだら沈んだり凹んだり、音が鳴る現象と言いても様々な原因が考えられるというのはご理解いただけたでしょうか?
ちょっとしたことで直ることもありますので、いきなり新調しなければダメかな?と思わずに、まずは畳屋に相談していただき原因究明をすれば補修程度で済む可能性も大いにあります。
無理に新調を勧めたりもしませんので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
東京都北区で四代110余年
有限会社八巻畳工業
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