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今回2度目となる琉球畳の原料である七島藺草(しちとういぐさ)の刈取りに、大分県国東市へ行ってきました。
コロナ禍により2年間行けなかったのですが、少しでも農家さん達のお役に立てばと畳屋の仲間10名を募りお手伝い。
5月に自分で植付けた藺草がもう収穫期になっていることに驚きました。
植付けの記事はこちら↓
本物の琉球畳?縁無し畳とどう違うのか、その素材とメリット・デメリット
縁の無い畳を【琉球畳】と呼んでいる方が多いのですが、正確には【七島藺草】(しちとういぐさ)という草を編んで畳表にしたものを縁(へり)があっても無くても【琉球畳】といいます。
そのため普通の藺草や樹脂・和紙でできた畳表を使用して縁が無い畳は【縁無し畳】(へりなしたたみ)と憶えてください。
一般的な畳の原料である【藺草】(いぐさ)と違い、断面が三角形の七島藺草は縦に割いて1本になります。
表皮が厚いので大変丈夫で寿命は使用方法にもよりますが、普段使いでも10年以上皮剥けし難く強い特徴があります。
天然素材の畳では最も耐久性のある素材ですね。
七島藺草は断面が三角形
それではこの琉球畳と、いわゆる化学表と呼ばれる樹脂や和紙で出来ている畳で比べたメリット・デメリットについて分析していきます。
琉球畳のメリット
・天然素材としての耐久性が最も高く、丈夫で長持ち
・牧草のような良い香りが長続きして癒される
・生産枚数が極端に少ないので希少価値がある
・暑い夏に寝転んでも涼しくベタベタしない
・部屋の中の湿度を吸排出してコントロールしてくれる
化学表と比べたデメリット
・日焼けによる退色がある
・藺草同士の間が空きやすい
・湿度が高すぎるとカビが生える
・カラーを選ぶことができない
・生産枚数が少ないので高価
琉球畳が年間2000畳しか作られていない理由と気になる6畳間の価格(値段)とは
以前は中国産が手頃な値段で流通し、指定しなければほぼ99%が中国産の琉球畳でした。
現在、ではの農家も生産を辞めてしまい、大分県国東市の農家さん6~7軒のみ生産者さんが残っています。
1軒の農家さんが織機で織り込むことができる枚数は1日に1畳~2畳程度で、年間に流通する枚数は2000枚弱と言われています。
農繁期を除く7~8か月間しか製織できませんので非常に希少価値が高く、依頼から半年以上入荷待ちというのも珍しくありません。
そんな七島藺草の栽培から製織作業の中で最も農家さんが大変な作業は刈取りです。
刈取りは7月の終わりから9月の初めまで約1か月間に渡り炎天下の中続きます。
鎌で刈り取った七島藺草は折れやすく、折れてしまうとその後の商品になりません。
ヒモで縛って束ねるまで気の抜けない作業です。
鎌で手刈りする
長い草だけにすぐる
束ねて縛る
刈り取った七島藺草はすぐに分割機を使って縦半分に割き、その状態で乾燥させます。
昔は『浜干し』といって砂浜で干したそうです。
分割機で半分に割かれた藺草
乾燥窯で十分に乾燥させる
その後、根の部分に付いた『はかま』と呼ばれる外皮を叩いて落とし、再び乾燥させます。
袋詰めをしたら完成で、刈り取りが終わった時期に選別してから製織されます。
はかま落とし
因みに2022年現在の価格は半畳の新床(新調)で41,800円なので6畳間の場合は半畳12枚計算で501,600円となります。
今後は更に高騰することが見込まれます。
部屋の畳を本物の琉球畳にしたい!張り替え可能?フローリングに置き畳もお勧めの理由
基本的に琉球畳は『半畳市松敷き』(はんじょういちまつじき)といって、正方形の半畳を互いに90度向きを変えて敷きます。
こうする事によって光の加減で畳が2色のチェック柄に見え、縁も無いので和室が広く見えます。
よく1畳で出来た既存の畳床(畳の芯部分)を再利用して欲しいと言われますが、基本的には畳の構造上、再利用は難しく新調になります。
既存の畳が半畳の縁無しの場合のみ『表替え』という張り替え作業が可能です。
また、畳表を折り曲げて作製するため『裏返し』という畳表の裏面を再利用する作業はできません。
自宅に和室が無いという方でも琉球畳に憧れのある方はいるのではないでしょうか?
畳の厚みは薄い物で15mm~30mm程度に抑えられます。
フローリングの部屋でもテレビを見ながらゴロンとなりたい時もありますよね。
適度な弾力に草の香り。
置き畳としてフローリングの一角に簡易的な和室を作ることも可能です。
まとめ
本物の琉球畳は今後ますます貴重なものになり、その存続自体が大変厳しい状況にあります。
畳屋である我々が少しでも農家さんの力になれるよう、来年も仲間を募ってお手伝いをして契約農家さんから本物を仕入れたいと思います。
東京都北区で四代110余年
有限会社 八巻畳工業
03-3917-9827