畳のランクは一概には言えませんが、基本的には藺草(いぐさ)の本数が多い方が良いとされています。

理由は本数が多いほど全体で荷重や摩擦を受けるので傷み難いということです。

本数が少ないと藺草がよれたり簡単に擦り剝けることから裏付けも取れています。

しかし「一概には言えない」というのは藺草の品種や和室の環境によって「絶対に本数が多ければ耐久性抜群」とは言い切れないからです。

今回の検証ではブランド品種から割と新しい品種の藺草で、本数を調べて耐久性について私なりの見解を述べたいと思います。

 

 

藺草の本数を簡単に調べる方法とルール説明

面倒な話をしますが、まず1畳の定義を決めないと本数を正確に比べられませんよね。

私の住む関東地方では1畳の丈は約1m76cm程度です。

厳密に言うと畳の裏側にまで畳表(ゴザ)を回して縫い付けるので1畳に使用する畳表は2mほど必要です。

そのため2mの中に何本の藺草があるのか?一本一本数えて行けば一番正確ですよね。

ちゃんと検証しろよ!って気持ちは良く分かりますが僕も仕事とか家庭とかあるので、、ちょっと現実的じゃないと思いまして今回は10cmの距離に何本の藺草が入っているかを数え、その本数×20をすることにより1畳に使用される藺草の本数を調べてみることにしました。

表面に出ている面は約176cmなのだからその本数で調べれば?という方もいるかもしれませんが、畳の大きさは各家庭1部屋ごと1畳ごとに違うので176cmはあくまで基準です。

小さい畳は畳表をカットして使用するとしても、仕様前最初の大きさでの本数の方がお客様に説明しやすいと考えて2mでいきます。

※藺草は表面に出ている1本の裏側にもう1本あるように織られているため、表面の数×2(裏面)×20(2m)で計算しています

 

 

賃貸用の最安値の畳は藺草が何本入っている?

これ難しい表現なのですが『最安値』と言っても畳店によって使用する材料が全く違うため、今回は当店で賃貸用としている価格帯の畳表を使います。

因みに当店で使用する賃貸用は以下の仕様です。

・品種 熊本県産『ひのはるか』

・特徴 中国産や国産の『ひのみどり』に比べて少し太くしなやかさをもつ

短い草で構成されているため、かなり細い藺草が多く全体的にバラつきがある

・経糸 綿糸シングル

・違い 当店では一番本数が少ないが、他店に比べると本数は多く詰まっている。

 

賃貸用

 

2mに5,000本

 

 

一般家庭の最安値、普及品の畳には何本の藺草が入っているか?

賃貸用とは違い一般家庭で使用される最安畳表のことを当店では『普及品』と名付けています。

このランクは経糸に綿糸を二重にして使用しています。

・品種 熊本県産『ひのみどり』

・特徴 他の品種に比べて藺草が細いが、全体の見た目は綺麗

思っていたよりも本数が多く驚いたが全体的に細い藺草が多く耐久性は期待できない

・経糸 綿糸ダブル

・違い 耐久性では劣るものの、見た目は綺麗なので普段使用しない部屋向け

 

普及品

 

2mに5,320本

 

 

お買い得品とはどのようにお買い得で何本の藺草が入っているか?

その名の通り金額の割に良い買い物をした感があるのが『お買い得品』です。

このランクは時季や仕入れの都合によって内容が変わるのですが、概ね価格以上の良品が揃いやすい価格帯です。

経糸には『麻糸のシングル』か『麻綿』です。

どちらになるかはその時の状況によりますが、どちらも悪い点はありません

・品種 熊本県産『ひのみどり・涼風』

・特徴 数年後の裏返しを視野に入れるのならしっかりしているこの価格帯から

品種によって本数は違うが今回はひのみどりで細い藺草のため本数は多め

・経糸 麻糸シングルか麻綿

・違い このランクから耐久性が上がります

 

お買い得品

 

2mに5,240本

 

 

何を根拠に四代目オススメを名乗るのかは藺草の品質を見ていただきたい

このくらいのランクになりますと藺草の本数もさることながら、藺草の長さも中々に伸びている物が使用されています。

長い藺草は先端と根を避けた真ん中の良い部分が利用されていますので耐久性は抜群です。

・品種 熊本県産『涼風』

・特徴 長い藺草を詰め込んで織り上げているので重量も抜群

太い品種なので本数が少なく感じるが詰まっている

・経糸 麻綿

・違い 価格をある程度抑えつつ耐久性も求めたい方に最適

 

四代目オススメ

 

2mに5,560本

 

 

当店一番人気の『迷ったらコレ!』は藺草の本数で勝負をしていない?

契約農家の吉田さんから自信を持って送られてくる1番草(1番長い藺草)で織り上げた他店には無い強靭な畳表です。

藺草の長さ・太さ・安全性の3拍子が揃った畳表は『特定栽培農産物』に指定された【残留農薬ゼロ】の付加価値が付いています。

藺草が丸々太っているので本数的には少ないですが、耐久性も当店で1番!!

・品種 熊本県産『涼風』

・特徴 とにかく太いから強い

1本1本がこの太さでこの本数は織り上げるのに熟練の技術が必要

・経糸 麻綿

・違い 他のランクとは格が違う

 

迷ったらコレ!

 

2mに5,640本

 

 

茶室に使用する撥水加工がされた畳表は藺草の本数が割と多い?

主に茶室など水分で染みが出来やすい和室に使用される畳表で、撥水加工がされていて水を弾きます。

品種が『ひのみどり』という細くて見た目が綺麗な藺草を使用しています。

・品種 熊本県産『ひのみどり』

・特徴 見た目が綺麗

細い藺草のため耐久性は1番人気に劣る

・経糸 麻綿

・違い 撥水加工がしてある

 

特上品

 

2mに5,280本

 

 

寺社仏閣に納められる最高級の畳表には何本の藺草が使用されているのか?

最高級品と言えばブランドである『ひのさらさ』という業界規格の最高峰があります。

最高級畳表は藺草の種類(品種)や藺草の長さ・重量まで細かく規定があり、それをクリアして初めて名乗ることが出来ます。

細く色むらの少ない『ひのみどり』という品種で、藺草の長さが京間サイズの場合139.4cm以上を使用し1畳の重量は3kg以上でなくてはならないとあります。(経糸が麻麻の場合)

・品種 熊本県産『ひのみどり』

・特徴 長い藺草のみを使用し色むらが無く美しい

藺草1本1本を選別しているので織り上げる前から手間が掛かっている

・経糸 麻麻

・違い 耐久性よりも美しさを追求した至極の一品

 

 

2mに5,560本

 

 

まとめ

今回藺草の本数を検証して一番驚いたのは短い草ほど太さにバラつきがあり、明らかに細い先端部分が使用されているという事でした。

藺草は根元が太く耐久性もありますので短い草は先端部分の細い箇所が多く、本数が多くても歩いた時の摩擦により擦り切れが早いという印象でした。

その点、新品種の『涼風』は太い特徴があるので本数自体は少なめになってしまいますが、ギッシリと詰まった高ランクの畳表は丈夫で長持ちする事が間違いなさそうです。

見た目を重視するか耐久性を重視するか?

本数だけでは計れない、品種による違いも参考にしてもらえればと思います。

 

 

東京都北区で四代110余年

有限会社八巻畳工業

03-3917-9827