私は畳屋なので建築士や設計士さんから「畳の厚み教えて」とよく電話が掛かってきます。

正直に言うと「建築士や設計士なんだから分かるだろ!」と言いたいところですが、現在の建築様式ではバリアフリーが標準化されているので一昔前と違って畳の厚みは薄くなりつつあります。

要するに「何センチまで薄くなる?」という意味合いの問い合わせでもあるんですね。

今回は畳の厚みについて徹底解説していきます。

 

 

一般的な畳の厚みとその理由

通常、畳は『畳寄せ(たたみよせ)』や敷居という木材の枠内に納まります。

 

関東では6センチ(二寸)

関西では5.5センチ(一寸八分)

 

この厚みが基本です。

最近では関東でも5.5センチがかなり増えている傾向にありますが、関西の京間は『約191cm×95.5cm』と関東以北の畳『約176cm×88cm』に比べて大きいので、この僅か5mmが重さを左右します。

畳のサイズに関しては詳しくはこちら↓

【京間・江戸間】畳のサイズ(大きさ)って一畳ずつ違うって知ってました? | 東京都北区の畳店 畳の凹み ヘリなし畳は八巻畳店 (yamaki-tatami.com)

 

藁(わら)製の畳は関東でも1枚30キロほどあります。

関西の京間サイズで厚み6センチの藁床(わらどこ)になると、その重さは35キロを超えてきますので一人で担いで移動するのは大変です。

そのため関西の畳は厚みが基本的には5.5センチなのだと思われます。

 

畳を敷くために一段下がった床面

 

 

畳の厚みに基準があっても平らにならない本当の理由

現在では新調する畳の芯材(畳床)は90%以上が藁ではなく木質チップボードと発泡スチロール(スタイロ)の組み合わせで出来ています。

 

藁床の断面

 

ボード床の断面

 

そのため平らでムラが無くなりましたが、以前主流だった藁床は40センチ程度に積んだ藁を5センチほどに圧縮し縫い締めて作っているため、仕上がりには多少の誤差が出ていました。

また、人が乗ったり歩いたりして潰れてきますので、良く踏み込む入り口付近などは敷居との段差ができやすいこともあります。

 

畳屋目線で言わせてもらいますと、最も『畳の厚みが統一できていない理由』として『大工さんの腕次第』という非常に残念な結論があります。

一般の方なら家を建てる上で和室の床面が水平で、四隅90度の正方形か長方形を想像しますよね?

 

私は27年畳屋やっていますが、未だかつてそのような和室に出会ったことはありません。

 

関東では特に真壁構造なので柱が出っ張ったり引っ込んだりしているのは勿論、和室自体がほとんどの場合歪んで作られています。

大袈裟に言うと台形や平行四辺形のように、真四角に仕上がっている和室は無いと言っても過言ではないです。

これは和室を基準に家を建てている訳ではないというのが一つの理由で、もう一つは畳寄せに使用される木材の歪みなどが原因です。

 

厚みの話に戻りますが、前述したように躯体の構造に合わせて畳寄せや敷居を取り付けるため、床面が水平でなければそれらも適当な位置に取り付けられます。

そのため部屋の奥は6.5センチの深さがあるのに、手前の入り口付近は5センチしか深さが無い。というのはごく当たり前のようにあります。

深い分には畳の下にゴザなどを入れて調整できるのですが、浅い場合は畳の厚みが基本的に仕上がり5.5センチなので、それ以上薄く作れず少し出っ張ってしまいます。

それならそこだけ5センチの畳にすれば?と思いますよね。

様々な厚みに作れるのなら床面が水平でない場合は組み合わせれば良いと思うのですが、違った厚みの畳同士を並べた場合は段差ができます。

これを解消するのに畳の下にゴザやベニヤを入れて厚みを均一にすることはできても、相当幅広く多くのゴザやベニヤを入れないと坂になってしまいます。

もっと問題なのは下にゴザやベニヤを入れると畳が落ち着かず、踏んだ時に『フカフカ』してしまうことです。

 

和室の採寸

 

 

床暖房の畳は15mm厚と薄いが普通の畳に比べて耐久性は大丈夫なの?

畳の厚みは床屋さんと呼ばれる製畳メーカーが素材を組み合わせて縫い製品として問屋に出荷します。

最近では木質チップボードと発泡スチロールの組み合わせで様々な厚みの畳を製作依頼できるのですが、冒頭で述べた通り基本的には5.5センチか6センチ仕上がりが主流なため、それ以外の厚みは特注になります。

この次に多いのが3センチ。

床暖房で1.5センチとありますが、最も薄い畳で8mm仕上がりです。

1.5センチや8mmの畳は薄過ぎるので耐久性はありません。

何度も張り替えが出来ないので使い捨てと言って良いでしょう。

製造工程に手間が掛かるので割高ですし、依頼を断る畳店も中にはあります。

最近では床暖房でなくてもバリアフリーにするため、フローリング材の厚みに合わせて1.5センチの畳を敷く場合が増えてきました。

踏んですぐに分かりますが、薄いので硬くてくつろげません。

もし置き畳をご希望の方は3センチ以上の厚みをお勧めします。

置き畳はこちらを参照してください↓

置き畳 | 東京都北区の畳店 畳の凹み ヘリなし畳は八巻畳店 (yamaki-tatami.com)

 

 

東京都北区で四代110余年

有限会社 八巻畳工業

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