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国産畳専門店を目指して藺草の一大産地である熊本県八代市の農家さんを訪ねたのは8年前。
夏の【刈取り】と秋の【植付け準備】をお手伝いするために毎年2回6年間通い詰めました。
しかし新型コロナウイルスの影響で直近2年間は訪熊できず、この度2回のワクチン接種を済ませて緊急事態宣言開けすぐに行くこととなりました。
新八代駅
藺草農家の朝は早い
太陽が昇ってくる時間
早朝6:00に起きて朝食前の6:30には藺草苗を{苗割}してくれる家庭に運んだり回収したりする。
回収してきた藺草苗
すぐさま前日に用意したポット苗を田んぼに設置しに行く。
田んぼの中はゆるい土なので足を取られて真っすぐ歩くのもおぼつかない。
苗床を並べて置く
ここまでしてようやく朝ごはん。
食べるなりまた次の作業に取り掛かる。
苗を分割する
藺草というのは一株から放射状にランナーを伸ばして増えていく植物で、一本一本が葉であり茎である。
最長で成人男性の背丈ほど伸びるこの草は、2本程度の成長した草に新芽が付いている状態に分割し、それを1パレットに320の土が入った穴へ刺していく。
畑から掘り起こした藺草束
大まかに分割して
更に細かく分割して根を短く切る
完成した苗たち
ポットに苗を刺す
水に浸して柔らかくなった土にひたすら分割した苗を刺していく。
1パレット320回も刺すので根気のいる作業だ。
何でも良いから刺せば良いという訳ではなく、苗割のおばちゃんによっては株が大きかったり新芽が無い不良苗も多くある。
これを一株ずつ検品し時には割り直して、時には捨てて、丈夫に育ちそうな苗だけを刺すので時間が非常に掛かる。
お世話になった吉田家の方々が割った苗なら安心して刺していけるが、酷いのに当たると半分近く廃棄ということもあり時間だけが過ぎていく。
苗床のポット
検品しながら刺していく吉田さん
田んぼに並べて敷く
夕方日が暮れる直前になるとポット苗をトラックに積み込み田んぼへ向かう。
早朝した作業をもう一度繰り返す。
ここで育った藺草は更に分割され畑で増えた後に、また田んぼへ植えつけられ収穫される。
収穫後は畳表になるように織機で織るのだが、ここまでが農家さんの仕事で、お客様宅に畳として敷かれるまでに2年の歳月が掛かる。
このポット苗は藺草の赤ちゃんのようなものと考えていただきたい。
一番手前の5つは私が割って刺した苗
藺草農家の夜は遅い
夕方、更に分割とポットへ苗を刺す作業は続き、夕飯を食べ、すぐさま同じ作業に戻る。
夜は10時過ぎまで作業し終了。
また分割してまた刺す!
吉田家のご厚意でいつも先に風呂へ入らせてもらっているが、家族は片付けをしたりで私が風呂を出たころに帰宅。
明日も6:00に起きて6:30から作業が待っている。
これを休みなく、ひと月ほど続けるだけではなく、途中に稲刈りという作業も入るので農家さんには本当に頭が下がる。
たった2泊3日でしたが、ほんの少しはお役に立ってると信じて東京へ帰るのでした。
吉田さん
息子の貴ちゃん
最後に
吉田家の栽培する藺草は消費者の安全を最も優先した『残留農薬ゼロ』が基本。
除草剤の影響が出ないよう雑草も手で抜き食べても安全な藺草です。
流通している畳表に比べて一本一本が太く、丈夫で長持ちなのも特徴。
私は生産者と消費者の間に立ち、生産者にはお客様が望む藺草の栽培と畳表の製織をお願いし、お客様にはそのこだわりと安全性をお伝えしています。
吉田さんと出会ってから8年。
寝食を共にし、意見や要望の交換をして、毎年新しいアイデアや取り組みを試しています。
吉田さんの育てた藺草でできた畳表は一番人気ということもあり、時期によってはお待ちいただくこともございます。
ご注文はお早目に!
東京都北区で四代110余年
有限会社 八巻畳工業