畳の裏返しについて
畳の施工には大きく分けて3パターンあることは前述しました通りです。
ではその一つである裏返し(うらがえし)について。
よくあるお客様からの質問で「畳を引っくり返すだけなのに料金が発生するの?」と言われます。
正直に言いますと、私も畳屋になる前はそう思っていました。
先代に「お前は馬鹿野郎か!?」と言われましたが、畳屋の息子が知らないのですから一般の人が知ってなくても不思議ではありません。
ではなぜ畳自体を引っくり返してはダメなのか?
理由は二つあります。
① 畳の裏面には畳表(ゴザ)が張っていません
畳は床材なので張り替えの時以外はめくりませんよね?
そのため裏側(底側)になった面は空気に触れないので湿気を含みます。
畳表は天然素材なので湿気を多く含むとカビが生えてしまうのです。
② 畳の側面(断面)は垂直ではなく角度が付いている
畳って敷いてあるのは見たことがあっても引き上げた状態を見たことのある人は少ないと思います。
もしチャンスがあればよく見てほしいのですが、畳の側面は真っすぐではなく底面に向かってやや内側に角度が付いています。
これは畳と畳が合わさる場合に上面がピタリと接地するようにするためで、垂直の断面同士だと藁(わら)などでできた畳は隙間ができやすいためです。
そのため寸法を少しだけきつめに作って畳同士が押しあうようなイメージで職人は仕上げます。
という事で畳自体を引っくり返して敷くと隙間だらけになってしまうのです。
裏返しとは?
現在敷いてある畳の表面(ゴザ)と縁を剥がして、その畳表(ゴザ)だけを引っくり返して新しい縁で縫い付けます。
最初に張ってある畳表のランクにもよりますが傷や染みが多かったり、年数が経ち過ぎて裏まで日焼けした場合は表替え(おもてがえ)をお勧めしています。
せっかく張り替えたのにあんまり綺麗じゃなかったら意味ないですからね。
費用は?
畳屋さんによって違いますが、材料費が新しい縁と糸などの副資材のみ。
ほとんどが手間なので1畳3,000円から6,000円程度が主流です。
この時に縮んでしまった畳の補修などもしますので、極端に安いと隙間だらけという事もありますのでご注意を。
裏返しの目安は?
「まだ早いかな?」と思った時期が裏返しの目安の時期です。
私は3年~5年を推奨しています。
理由としては上記で述べたように、年数が経てば経つほど青味はなくなりくすんだ色になってきます。
日当たりの良い場所かどうかも重要なポイントで、ベランダや窓に面した和室の畳は裏まで日焼けしやすいので、早目の裏返しが良いでしょう。
裏返しをしているかしていないか不明の場合は畳屋さんに見てもらってください。
前回施工した畳屋さんがいい加減な方でなければ、畳表と縁の際を見て判断が付きます。
左 表替えの畳 右 3年で裏返した畳
お部屋を清潔で明るく保つ秘訣は裏返しにあります。
一度裏返した畳は擦り切れるまで使用し、次の機会は表替えか新床になります。
畳ってエコですよねー。
東京都北区で四代110余年
有限会社 八巻畳工業