9月末にイ草植付け準備のため、義援金を持参して【ポット苗】のお手伝いに行ったばかりですが、田植えは12月に行われます。

ポット苗の記事↓

【熊本県八代市2025】畳の原料イ草のポット苗植付け【11回目】 - 東京都北区の畳店 カビに強い畳 ヘリなし畳は八巻畳店

東京から熊本県八代市まで行くのは今年4回目。

2月の品評会、6月の刈り取り、9月のポット苗、今回の手植えです。

私は12年前から刈取りと植付け準備のお手伝いに毎年行っていますが、今回は沖縄県で地産地消されている【ビーグ】というイ草を手植えするために伺いました。

足腰のキツイ手植え

左が息子さんで右が吉田さん

ビーグは通常のイ草に比べて倍くらい太いイ草で、ポットよりも手植えの方が向いているとのことで、試験的に手植えをしました。

八代市の農家さんでも近年では手植えをしている方はほとんどおらず、若い世代では経験したことがない農家さんもいるそうです。

草というより枝くらい太く感じるビーグの断面

真冬に植えて真夏に刈り取るイ草の栽培と畳表になって出荷されるまで

イ草は苗の状態で2~3本の小株から、次々と芽を増やして大きな株へと成長します。

時期によりますが『畑苗』と言って田んぼではなく、畑で株を増やしていき、更にその株を小さく分割して田んぼに植えます。

田んぼに植えるのは12月頃が適しているとされ、この時期に十分増えた子株の苗を植える作業がありますが、ポット苗・カセット式と、どちらも移植機を使用するため手植えはほとんどしません。

途中、新芽に陽が届きやすくするため『先刈り』という、ある程度の高さにイ草の長さを揃えて切りそろえる作業があります。

この他にも肥料の散布や、長く伸びたイ草が倒れないようにするため杭を打ち、網をかける作業もあります。

6月末から7月中旬の暑い時季に、十分に伸びたイ草を刈り取ります。

この作業は休みなしで毎日朝3:00から夕方まで行われ、1年分のイ草を短期間で収穫します。

収穫後は稲を植えて畳表の製織作業になります。

イ草農家さんが栽培から製織までを担い、畳表になった状態で出荷し、畳屋の元へ届くという仕組みです。

畑苗

本土では1軒だけ!極太ビーグの特徴と将来性

ビーグの特徴は何といっても太いことでしょう。

沖縄県では生産農家が数軒あるものの、中国産のビーグ畳表が圧倒的に多いそうです。

また通常の畳表とは生産過程が少し違い、刈り取ったイ草を『泥染め』しません。

イ草を泥染めする理由はいくつかあります。

・退色の保護

 イ草は植物なので自然に枯れて緑色から黄色~茶色へ変化しますが、表皮を土で保護することにより退色を防いでいます

・芳香性

 刈り取って乾燥させただけのイ草やビーグは牧草のような香りですが、泥染めしたイ草は畳の香りになります

・表面の摩擦

 泥染めの過程で微細な傷がイ草の表面に付くことにより、摩擦が高くなり滑りにくくなっています

今回本土でビーグを栽培し始めた農家の吉田家では沖縄の仕様とは違い、泥染めをした畳表の生産に挑戦しています。

太く丈夫なビーグが畳の香りでお客様のお宅に届きます。

泥染めの様子

8月にあった熊本豪雨水害の爪痕と義援金

当店では売り上げの一部を産直取引のある農家さんへ、豪雨水害の義援金として持参しています。

今回は農家を廃業後にイ草を買い取って製織のみを行う、丸吉さんの所へ行ってきました。

丸吉さんの工場は水害の激しかった地域で、地面から50センチほどの高さにまで水が入ってしまったとのことでした。

主に織り上げる前のイ草束や、製織後に出荷待ちの畳表が水に浸かり、前回見に行った時は廃棄するイ草と畳表の量に唖然としました。

全て濡れて廃棄するイ草と畳表

さらに驚いたのは、これらを廃棄するのに7~8万円掛かるという現実でした。

出荷すれば数十万円になる畳表なのに、処分に費用が・・・。

他にも織機や備品が被害にあっておりましたので、僅かばかりですがお見舞いとして義援金を届けさせていただきました。

当店では組合や有志の仲間を通して寄付をしておりますが、やはり産直取引のある方には直接持参しなければ!と今回もお邪魔してきました。

時間は掛かりましたが、ようやく生産が軌道に乗ってきたとのことで一安心しました。

水害により畳表の価格が高騰している中、できるだけ抑えて出荷していただけているのは本当にありがたいことです。

今後も義援金だけではなく、植付け・刈取りと汗を流して産地の復興に尽力していきます。

畳屋の私はイ草や畳表が無ければ商売になりません。

産地とともに東京の畳屋も頑張ります!

織り師の丸吉さんと