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私のような生まれた時から畳店の子供でない限り、畳に興味があって「職人として畳屋になりたい!」と思っても、まず何からどうして良いか全く分かりませんよね。
そもそも今の時代は職人に憧れる若手もほとんどいないという現状があり、畳店の数は1年に1割程度ずつ減少しています。
それでも畳職人になりたいという方がいるかもしれません。
今回はそんな希少な方に向けた内容となっております。
20数年前の訓練校時代
畳屋には国家資格があるって本当?2級技能士と1級技能士の違いについて
驚かれる方も多いのですが畳屋には【畳製作技能士】という国家資格があります。
この資格には『1級』と『2級』があり試験を受ける人によって違いますが、2級は実務経験2年。
1級は実務経験7年、または2級合格後2年以上の実務経験とあります。
実際には高頻度で手縫いをしていない限り2級を飛ばして1級に合格するのはまず不可能でしょう。
どちらの級も試験は学科と実技があり、実技は実際に畳を1畳手縫いで時間内に仕上げ枠に納めます。
2級と1級の実技試験では大きな差があり、2級の素框(すがまち)と呼ばれる藁床(わらどこ)をそのまま使用する作業に対して、1級は板入れという藁床の短辺2箇所に板を入れて補強する作業、縫い方の違いなどがあります。
また最近では2級は上敷きゴザの手縫いが加わり、1級は以前と同じように床の間を仕上げます。
学科に関しては畳の問題というよりも主に建築の問題が多く出ます。
在来工法など建築の基礎をある程度勉強しないと厳しいかもしれません。
実技と学科のどちらかのみを合格し片方を不合格になった場合は、次期の試験で合格した方は免除されます。
畳屋の技能士試験に合格するなら学校に通うのが一番?畳の学校なんてあるの??
時代の流れと言ってしまえば一言ですが、現在一般家庭の畳を全て手縫いで仕上げる畳屋さんというのはほとんどいません。
私が知らないだけかもしれませんが99%の畳屋は小型逢着機か大型逢着機を使用して畳を縫っています。
逢着機というのは大型ミシンをイメージしてもらえれば分かりやすいですが、縫う作業を機械に任せていますので手縫いの練習をする機会というのは自分で作らない限りありません。
逆に縫う作業以外は未だに手作業が多く、包丁を使って畳表を切ったり縁を折り返して角を作ったりと、機械には任せられない作業があります。
上記のように畳店に就職していても手縫いは学ぶ機会が少ないため、現在では多くの場合『畳の訓練校に通って手縫い技術と学科の講習を受け受験する』というスタイルが一般的です。
畳の訓練校は全国に数校あります。
私が卒業した東京都をはじめ、埼玉・茨城・京都などの他にもあるそうです。
東京の訓練校を例にしてみますと就学期間は3年間で週に1日実技の授業があります。
朝から夕方まで実技を学び、その日の夕方から学科の授業があります。
他に1日夕方から学科の授業があり、これを3年間繰り返します。
卒業試験では実技と学科の両方を受けますが、合格すると卒業後に行われる2級技能士試験で学科が免除されました。(各学校により違う可能性あり)
学校を卒業しただけでは1級の試験に合格するにはかなり難しいので、2級試験合格後は試験前に何度か講師を招いて手縫いの練習会をしたのも良い思い出です。
東京は通いの学校でしたが茨城は全寮制、京都は丁稚のように修行先に住み込みになるそうです。(修行先によってアパート暮らしもある)
就学年数も各訓練校によって違います。
畳の国家資格に挑戦するなら畳屋に就職するのが一番というただ一つの理由
世の中には様々な資格があり、その資格を取るために学校へ通ったり通信で勉強しますよね。
畳製作技能士が他の資格と比べて大きく違う点は、とにかく実技(畳の手縫い)が簡単に習得できるものではないところです。
また、縫うだけではなく採寸の方法も独特で尺貫法ですし、大きな包丁で畳床を切ったり縫った糸を締め直したりと繊細な技術と力もある程度必要な作業が混在しています。
そのため普段の日は畳店で働きながら学校へ行き、基礎知識と実務を併用して覚えるという方法が一般的になります。
とは言え畳店に就職するにしてもどんなお店を選んで良いか、また学校はどんな訓練校に入学した方が良いのか気になりますよね。
簡単に考えれば寺社仏閣を請け負うような老舗の畳店なら技術は延びますのでお勧めです。
しかし修行後に独立を目指すような方であれば正社員のいる会社として成り立っている畳店が良いかもしれません。
理由は多角経営しているので畳だけではなく襖・障子・網戸の施工ができたり、従業員同士で切磋琢磨できるなど独立後に商売としての基礎が学べる点が挙げられます。
昔は無口で無愛想でも腕が良ければ仕事はあったでしょう。
しかし現在ではお客様の畳に対する関心と知識が薄れてきていますので、一つ一つ丁寧に説明し礼儀作法もきちんとできなければ相手にされません。
畳訓練校で言えば京都のように丁稚で住み込みをするスタイルが合う方は、京都式(本式)の技術を学べます。
兄弟子・弟弟子のように教わりながら教えていく京都の訓練校は人気があり、全国から生徒が入学しています。
他の訓練校にも色々と特色がありますので一概には言えませんが、まず今現在の畳訓練校は生徒の応募が少なく休校中の学校も多くあります。
私が入学した約20年前は1学年13人もいましたが、現在では東京の訓練校でも1学年に1~2人と寂しい状況になりつつあります。
畳の国家資格なんか持っていても仕方がない?資格が無くても畳屋になれるカラクリとは
ここまで資格の話や訓練校・修行先について書いてきて大変申し訳ないのですが、実はこの国家資格、持っていなくても畳屋として営業ができます。
逆に【畳製作1級技能士】免許を持っていないとできない仕事というのは、私が知る限り無いと思います。
実状では1級技能士を取得していない畳職人の方が多く、年配の方であれば『普段から手縫いしているのに必要ない』とか『そんなもの無くても仕事がたくさんあった』と言うでしょうし、若い方では『資格が無いと請け負えない仕事が無いのになぜ取る必要が?』と言うでしょう。
ではなぜ私が3年間訓練校に通って資格を取得したのか?
私の場合は無資格の父が『技術を学んでほしい』という理由で訓練校に申し込みをして、嫌々入学した経緯があります。
その当時はボタンを押して機械が畳を縫ってくれているのに、なぜ自分で縫わなければいけないのか全く理解ができませんでした。
訓練校に通うようになり手縫いの技術を覚えると、今まで何気なくしていた作業に一つ一つ意味があり『自分は機械に畳を作らされていたんだな』と思うようになりました。
また、同期の仲間や先輩、先生から得る情報と知識は自分のスキルアップには欠かせない出会いでもありました。
卒業後【一級畳製作技能士】は名刺に書ける程度の資格とは言え、3年間学校に通って習得した技術とその後の免許取得は自信へと変わり、難しい仕事でも工夫をしたり相談することによって乗り越えることができました。
基礎を学ぶという事は応用へと繋がります。
収入が増える増えないではなく、確かな技術の裏付けとして取得していて良かったと私は思っています。
今から畳職人になりたいのなら
気持ちがあれば性別は関係ありません。
女性の畳職人さんも勿論いますし、昔と違って変な差別はほとんど無くなりました。
ただ、年齢だけは若い方が良いとだけ言っておきます。
理由は未だに1枚30キロ以上ある畳を5階まで担いで上がるなど体力的な問題もあるのですが、何より覚えることが膨大にあります。
従業員として働きたいという場合であれば、それほどハードルは高くありません。
しかし独立を考えて畳職人を目指すのであれば、ある程度若い時から経験を積む必要が出てきます。
中年~高齢だとダメという訳ではありませんが若い人に比べると並大抵の努力では難しい現実があります。
当店でも従業員を募集しています。(2022年12月現在)
お気軽にお問い合わせください。
東京近郊で畳の訓練校に興味のある方は組合にお問い合わせください。
東京都北区で四代110余年
有限会社八巻畳工業
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