新築やリフォームで畳が新しくなった途端に「なんだか硬くて全然くつろげない・・・」なんて話を最近よく聞くようになりました。

畳が新しいから硬いのでしょうか?

実は畳業界でほとんどの畳屋が採用している素材に原因があります。

そのような素材に対する解決方法もありますが、コストを抑えて利益を増やすために、ほとんどと言ってよいほど対策をしていない業者が横行しています。

くつろげるはずの和室でごろ寝も出来ないほど硬い畳なら、フローリングで良いですよね?

今回はあまり語られない畳業界の闇を暴いていきます。

 

 

変化する畳素材とその背景とは

今から約30年ほど前、畳と言えば畳床(畳の芯材)は藁(わら)製でした。

その更に前は台湾などから輸入の藁床(わらどこ)に人を刺すダニがいたため、刺されて被害にあう方が多く問題になりました。

その後1畳で約30キロと大変重い事も手伝い、ダニが潜り込みにくく軽量化した『木質チップボード』と『建材用発泡スチロール』の3層で構成された『Ⅲ型』と呼ばれる畳床が急速に採用されるようになりました。

 

ボードで発泡スチロールを挟んでいる

 

 

木質チップボードの弱点

この普及によりダニや重量という問題は軽減されましたが木質チップボードは硬いために、藁製のような弾力と柔らかさがありません。

そのため「正座が出来ない、くつろげない」という消費者の声が次々上がるも、畳屋サイドとしては「ダニが出にくいでしょ?」と乗り切ってきた裏事情がありました。

 

 

お客様無視!素材の流通と構図

近年、藁製の畳が激減し『新床』と言えばほぼ『ダイケンボード』になりました。

これは藁が高価になってきたという理由も勿論ありますが、畳屋的にはダニのクレームが怖い事と高齢化に伴い重い畳を避ける傾向が背景にあります。

では『ボード床』のトップシェアを誇る『ダイケン』に問題があるのでしょうか?

 

ダイケンは素材である木質チップボードを生産するメーカーであり、畳床として製造しているのは畳床製造業者です。

構図としてはダイケンから提供された素材を畳床製造業者が畳床にし、その畳床を材料商や問屋が仕入れて畳店に卸します。

畳屋は出来上がった畳床を購入するだけなので、心情的には「安ければ安いほど良い」となり、製造元は「安く卸すのなら硬くても仕方がないでしょ?」となります。

ここに使用するお客様(消費者)の気持ちは一切含まれません。

 

 

一般的な畳はボードが剥き出し

 

あるのに採用しない解決策と業界の闇

結論から言うと【藁製の畳が良い】となりますが、前述のように価格面や建築の高気密化によるダニ問題(住環境のメンテナンスで防げる)があるとは言え、消費者に高価な畳を提供しにくい事や換気と掃除など面倒を強いらなければならない関係性で、難しいのが事実です。

現実問題として【硬いボードの上にクッション材を乗せる】という解決方法が最も畳の弾力性を復活させるのは間違いないでしょう。

 

ではなぜ、そんな簡単な事が出来ない業界なのか?

答えは【プラスアルファの手間・コスト】と【お客様目線でない体質】でしょう。

基本的にクッション材を入れるのなら製造段階が一番望ましいのです。

なぜならボードへ一緒に縫い付けるため、ズレにくく凹凸が出来にくいからです。

表替えや裏返しの張り替え時だと上に乗せるだけになるので仕上がりが悪くなります。

変な話、ボード床でも経年劣化で柔らかくなる場合もありますので、張り替え時には気にならないというお客様も多いと思います。

 

 

 

当店の取り組みと硬い畳でお悩みの方へ

当店では一般家庭から賃貸用の畳でも、全ての新床にクッション材を採用しています。

よく「八巻さんの畳は高いね」と言われますが、Ⅲ型の場合、真ん中にくる発泡スチロールにもランクがあるのをご存じでしょうか?

ほとんどの畳店では低コストで仕上げるために、この部分は安価な発泡スチロールを採用しています。

当店は高気密の建材用発泡スチロールを採用し、コストよりも耐久性を重視しているため少し割高になっています。

 

クッション材と不織布のダブル構造

 

もし当店のご近所ではなく硬い畳にお悩みの方は、畳替えの際に業者へご相談ください。

新床であれば対応してくれる業者も多くあると思います。

その際に気を付けなければいけないのが『床暖房畳』などの厚みが15mm程度しかない畳です。

このような畳は元々が薄いので硬く、クッション材を入れると畳が持ち上がってしまう事があります。

 

 

まとめ

本来、製造元が「クッション材無しでは販売しない」等の対策を取れば、ここまで畳が嫌われる事も無かったように感じます。

しかし「畳は安くなければ売れない」などの畳屋目線は、製造元にも低価格路線を推奨してしまった悪循環があるのです。

良心的な畳店は『価格が安い』のではなく『良い素材を使用した安心できる業者』なのです。

畳業界がもっと消費者目線であれば、外国で畳が流行っているように日本でも好まれ続ける床材だったかもしれませんね。

 

 

東京都北区で四代110余年

有限会社 八巻畳工業