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本門仏立宗で日蓮上人が鎮座する畳の原型とも呼ばれる【四天付き御茵(おしとね)】の依頼が兵庫県のお寺様からありました。
一般の方が目にする畳とは全く形状の異なる御茵、実は天皇や神仏が鎮座する座布団として現在でも寺社仏閣に有職畳(ゆうそくたたみ)として受け継がれています。
今回はその御茵(褥←じょく)を記事にしたいと思います。
有職畳についてはこちら↓
四天付き御茵(褥)の素材と作製方法
私が初めて御茵のご依頼を請けたのは約10年前、渋谷にある本門仏立宗の乗泉寺隣の仏具店さんからでした。
以前は京都や埼玉の畳職人さんに依頼していた日蓮上人像が鎮座する御茵を、廃業に伴い弊社で作れるか?と言ったご相談でした。
その当時は未熟で自信もありませんでしたが興味だけは人一倍強く、先輩職人さんに相談して毎晩徹夜し、見よう見真似で何とか作って納品したのを昨日のような事に覚えています。
小さいサイズの四天付き御茵
御茵と言っても一般的には四天は無く、額縁も大和錦(やまとにしき)と呼ばれる生地が縫い付けられます。
しかし本門仏立宗では縁に【繧繝縁(うんげんべり)】という最上級の縁を使用し、四隅には仏教の世界を守護する存在として信仰されている四天王を指す四天縁が付きます。
四天王は各々東、西、南、北を守るとされています
四天の無い大和錦の一般的な御茵
明治神宮や京都御所に奉納されている御茵は有職故事に習い、芯材を藺草で織られた畳表を5枚重ねにし鏡と呼ばれる白地の生地を中心に周りは四方を縁で縫い付けます。
鏡や縁の下には綿を入れ適度に膨らませ座布団のように座り心地を良くするのですが、入れたばかりの綿は馴染みにくく上から張った鏡は経年劣化で馴染んだ頃に綿が潰れてシワシワになることもあります。
そのため綿を敷いて鏡を張っただけで終わりではなく、一晩以上馴染ませた後に鏡を剥がして綿を更に追加し鏡を張り直す作業をすると仕上がりが抜群に違います。
このような方法は有職畳に特化した奈良県の浜田畳店さんが主宰するTTMクラブの合宿に参加して学んできました。
この研修も通い続けて10年ほどになりますが、参加していなかったらと思うと背筋が凍る思いです・・・。
四天付き御茵を製作する難しさと完璧に仕上げることのできる畳職人とは
正直に言いますと当初ご依頼くださった仏具店さんが廃業に伴い、御茵の依頼が無くなったことに実は安堵しておりました。
その理由は製作に掛かる手間(時間)が膨大な上に、何度(100個以上)作っても納得のいく仕上がりに到達できないほど難易度が高いためです。
今回ご依頼いただいた福祉寺様から「ネットでようやく作製してくれる畳店を見つけることができた」と言われた時は、嬉しさの反面、そのご期待に応えることが出来るのか?という大変複雑な気持ちが入り混じっておりました。
ですが私も職人の端くれですので挑戦を選ばせていただき、持てる限りの技術で対応させていただきました。
まず何が難しいかと言うと四天と額縁の繧繝柄を合わせるだけではなく、四隅の重なり合った繧繝柄も綺麗に合わせなくてはなりません。
私が仏具店さんからご依頼を請ける前に作成していた畳店も、福祉寺さんの檀家さんが所有する御茵を作った畳店さんも、この柄合わせを全くしていないのです。
柄が繋ぎ目で合っていない
繧繝縁は決まった柄パターンがありますので四隅の内2箇所はどうやっても柄が合わないのは仕方がないのですが、四か所全てで柄が合わないのは手抜きであり職人の端くれとして気持ちが悪いじゃないですか。
勝手な自己満足かもしれませんが有職畳は古来より伝承された技と素材を受け継ぐものであり、手抜きで作った作品は次世代にお手本として受け継がれてしまいます。
そのため寺社仏閣や皇居、御所などの畳は専門知識のある技術に長けた畳職人が請けるべきであり、安価な見積もりで相見積もりをするような業者には任すべきではないと私は考えます。
今回完成した四天付き御茵
日蓮上人の仏像修復後に送っていただいた福祉寺様の写真
今回ご依頼いただいた福祉寺様より写真と弊社ブログに掲載許可がいただけました。
このようなことは非常に稀な例ですが、自分が夜なべをして仕上げた御茵に修復された日蓮上人の像が鎮座するお写真を送っていただき、本当にありがとうございました。
送っていただいたお写真
私自身は先祖が仏教徒という事もあり墓参りは年に1回行く程度ではありますが、宗派の違いや神仏であっても座具の違いなど、まだまだ勉強することがたくさんあって追いつけておりません。
しかし畳の起源ともなった寝具であり座具の御茵については製作面で常に勉強し技術力を向上しているつもりでもあります。
未だ100点の御茵は作れない未熟者ですが今後も精進していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
有職畳についてのご質問やお問い合わせはLINE公式でも受け付けております。