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皆さんは【有職畳(ゆうそくたたみ)】をご存じでしょうか?
簡単にご説明すると『古来からの製法』で『出来るだけ古来からの素材』を使用した、寺社仏閣用の畳を指します。
普段のお仕事ではまず出会わないであろう、この有職畳は皇室にも神様が鎮座する座具として存在しております。
当然このような畳は針と糸を使って手縫いしますが、畳業界の衰退と共に企業や職人が減り【切り糸】と呼ばれる手縫い用の糸が手に入り難くなってきました。
今回の研修では【龍鬢表(りゅうびんおもて)】に【大和錦(やまとにしき)】の二方縁を付け、ゴザの裏面は本継ぎによって仕上げる工程。
また、国内に唯一残る【切り糸】生産工場の見学をするため、全国から若手の畳屋さんが40名も参加しての研修となりました。
本物の畳とその作り方を教えてもらえるたった一つの研修会
TTMクラブは奈良県の浜田畳店さんが主宰する『タタミ・テクニカル・マネージメント』の略称で、私は参加して10年になりますがその歴史は長く、技術と知識の継承を目的とした団体です。
1日目の始まりは浜田先生による、これから製作する有職畳の講義。
浜田先生による講義
そして切り糸工場へ移動し実際に切り糸が製造される工程や、出来上がった製品について製作者と畳屋による意見交換を行いました。
大変暑い工場での作業は過酷なもので、染めた糸を乾かすヒーターも点いています。
その日・その時間帯の気温や天候によってヒーターの位置を微妙に調整するなど、自然との闘いでもある訳ですね。
原糸をよって切り糸にする機械
製品となった糸
ある程度の年齢の方ならご存じの畳屋が『肘で畳をグリグリしながら糸を引っ張る様子』ってありますよね?
そのように畳を手縫いする際に使用される糸をこの工場で生産しています。
かなりの力で糸を締めあげ、更にもう一度糸を締め直す作業までありますので、糸は丈夫でなければなりません。
また職人により糸の好みは違うもので太い糸が良いとか細い方が良いとか、より(ねじれ)が強くないとダメとか色々な意見があります。
工場の人達も畳屋からの意見は初めて聞いたそうで、生産者とユーザーの考え方が大きくズレていることにお互い驚いていました。
何より驚いたのがメーカーによって糸の太さや色が違うので各工場があると思っていたら、実は全てこの工場で作り方を微妙に変えているだけというのです。
しかも生産した日の天候や気温で同じメーカーの同梱包でも品質は大きく異なるとか。
更に今現在ではそのメーカーもほとんどが廃業して残っていないそうです。
驚きの連続でした。
まだまだ畳業界の事でも知らないことがたくさんありますね。
豊川稲荷でご祈祷いただき精進料理を堪能
研修二日目の朝は近所にある豊川稲荷にて一人一人の名前を読み上げてもらいながらご祈祷いただきました。
子供が受験生という事もあり、お守りを購入。
その後、肉や魚が入っていない精進料理をいただいたのですが、これがまた食する前の予想を覆し、しっかりとお腹一杯になりました。
味も特別に薄いという感じではなく、美味しかったです。
と、ここまで豊川稲荷を紹介しておいてなんですが、実は全員畳屋さん。
ご祈祷よりも精進料理よりも畳が気になって仕方がない。
ご祈祷までの待ち時間で全員が広間の畳を様々な角度から眺めて「中京間の三六だね」とか「寸法の割付が一直線になってないのはなんでだろう?」とか、一般の方が聞いても分からないような専門用語が飛び交っておりました。
大広間の畳
いざ3グループに分かれて有職畳の手縫い実習
実習では初心者の方から上級者まで3グループに分かれて、ぞれぞれ1枚のゴザを手縫いします。
私は10年ほどになりますので背伸びして未経験だった『龍鬢表 大和錦 二方縁 裏本継ぎ』に挑戦させていただきました。
龍鬢表を寸法通り包丁で切る
大和錦を縁にして縫い付ける
真ん中にある裏面ゴザの継ぎ目が分かりますか?
裏面も縁が綺麗に見えるようクケ縫いしてある
まとめ
2年間コロナ禍によって中断していた研修ですが、久々に行ってみると全国の畳屋さんから学ぶべき所がたくさんありました。
ちょっと集中力の低下や老眼で苦戦しましたが、最終的には良い仕上がりになったと思います。
今後はコロナ禍前のように研修や合宿に参加して、技術と知識に磨きを掛けたいと思っております。
夜学の様子
集合写真
東京都北区で四代110余年
有限会社八巻畳工業
03-3917-9827