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畳屋になって27年になりますが、年々畳の数は急速に減っています。
よくお客様に「畳屋さんって大変でしょ?食べて行けるの??」と質問されますが、正直に言えば食べて行けなくなる職業ではあると思います。
しかし衰退産業で滅びるのをただ待っているほど畳屋もバカではないので、全国の畳店でもやる気のある方たちは生き残りをかけて勉強しています。
私もその内の一人で約10年前の出会いが人生を変えたと言っても過言ではありません。
畳屋さんだけではなく、日本の伝統を守る衰退産業と言われる職人の皆さんには技術力は勿論ですが、経営の手法も学んで一緒に生き残って欲しいと思っています。
3日連続のセミナー
売上は後からついてくるから、まずは店のインフラ整備からしろ!
コンサルタントとして契約した先生から最初に言われたのは「売上を上げようと思うな!」でした。
その時はよく意味が分かりませんでしたが、当時はお店も家庭もグチャグチャで、例え売上だけ上がったとしても疲弊して続かなかったと思います。
当時の私は先代と揉めていたのでやりたい事も自由に出来ず、子供も幼いので育児も手伝い、従業員が足りないので毎晩残業して経理などをこなしていました。
そんな時に先生からは「2年間だけ我慢して店のインフラ整備をしてください」と言われました。
その間は売上が上がらなくても良いので、仕事がたくさん来てもお客様の満足度を落とさず、しかも家庭が平和でいられるように人を雇ってお店のシステムを改善しろという意味でした。
お陰様でお客様からの支持を受け、現在ではなんとか食べて行けています。
つい先日も3日間連続のセミナーがあり、異業種の方も多い中で『SNSの活用方法』『自社の問題解決』『接客から契約にいたるまで』を勉強させていただきました。
こちらの先生はとても尖っている方なので好き嫌いがハッキリと別れますが、商売は好き嫌いで出来るほど甘い物ではありませんよね。
正直に言うと嫌いなんですが、それも愛の鞭と思ってしがみついて行こうと思っています。
ご興味のある方は下記のリンクをご参照ください。
お勧めはしませんが「無理に売上を上げて死なれる事だけはしたくない」という信念には共感しますし、実際に仕事も家庭も良くなりましたので腕は確かだと思います。
従業員を増やすというハードルの高さは以外にも低かった
最初に取り掛かったのは事務をしてくれるパートさんの雇用でした。
よく「そんなの奥さんにやらせればいいじゃない?」っていう方がいますが、両親を見ている限りその選択は現代社会では全く効率的でない上に家庭崩壊に繋がると思っていたので最初からするつもりはありませんでした。
パートさんには当初、週2日勤務で事務や経理をお願いしました。
同じ年齢の男性従業員がいましたが、電話対応など女性従業員がいるだけで自然とお店の雰囲気が変わり、経理だけではなく軽作業もお願いするようになると週に3日、4日、5日と出勤日数を増やしてくれましたので、現在では正社員として雇用しています。
最初から正社員では給料面で二の足を踏んでしまっていたかもしれませんが、パートタイムでの雇用は徐々に上がっていく売上に対してハードルは低く、もっと早く雇用していれば良かったと思うほどでした。
現在では正社員の男性従業員と事務の女性従業員に加え、パートで女性の方にお手伝いいただいています。
お客様から安心してご依頼いただけるような畳店になりたくて私がやって来た事
新聞を購読している方ならチラシで良く見かけると思いますが『たたみ表替え2,700円!』などの格安広告ありますよね。
その多くは全国チェーン店で規模が違いますので、町場の畳店では価格競争しても歯が立ちません。
私は18歳で畳屋になり19歳から仕入れを担当していましたので、ある時、問屋さんが持ってきた畳表に一目惚れをしました。
その畳表は見栄えだけではなく、藺草(いぐさ)の一本一本が太くギッチリと詰まっており、今までに経験したことのない重量感もありました。
そんなある日、Facebookで偶然知り合った熊本の藺草農家さんがその畳表の生産者さんだったのです。
問屋ではその後に仕入れられなくなった、その素晴らしい畳表が譲ってほしくて気が付けば1年間に5回も熊本県に通っていました。
その後は年に2回、藺草の植付けと刈り取り作業をお手伝いするために通うこと9年目。
【特定栽培農産物】に指定される【残留農薬ゼロ】の畳表を安定して仕入れることが出来るようになりました。
中国産と化学表が8割を占める昨今に安心安全な『国産畳専門店』を名乗れるのは、この藺草農家さんのお陰でもあります。
藺草農家の吉田さんと
新たな事業展開と今後の畳業界について
当店では畳の他に『ふすま』『障子』『網戸』も以前から取り扱ってまいりました。
畳のある和室での施工にはなりますが、一緒にご依頼されることが多く自社施工しています。
最近ではご自宅での困りごとの相談が増えてきまして、畳屋なのに『防犯カメラ』や『モニター付きインターフォン』『カーテン』『家具の転倒防止器具』なども取り扱うようになりました。
中でもお客様からご依頼が多いのが「えっ?」と思うかもしれませんが『ドアノブ交換』です。
ラッチと言う部分が不具合になりドアの開閉が出来なくなったと、なぜかご依頼が続いています。
その他にも外壁や階段の塗装のご依頼もお請けしていています。
自社施工ではありませんが、信頼のできる業者を紹介させていただいております。
理由として多いのは「どこに頼んで良いか分からない」や「いくらかかるのか分からない」といったものです。
ご自宅の不具合を相談される事によって協力業者を紹介する事もできますので、お気軽にご相談ください。
そんな訳で老舗の畳屋ですが色々と事業展開をさせていただき、お客様の困りごとを少しでも解消できるようにと務めていくことが畳屋として生業を継続していける礎になるのかと今は思っております。
私だけではなく多くの畳店さんに残っていただくために、若輩者ではございますが本日機械メーカーさんのご依頼により、約60店の畳店さんに向けてオンラインセミナーの講師をさせていただきました。
内容は補助金で導入した機械設備によって当店がどのように変わったのか?というものでした。
『お客様の困った!に寄り添える』そんな畳店さんが増えるように、また当店も人に話す事によってより一層そうなれるように、今回のセミナー講師は大変自分のためにもなる良い機会となりました。
オンラインセミナーでの私
東京都北区で四代110余年
有限会社 八巻畳工業
03-3917-9827