その日は組合の会合でしこたまビールを飲んだ。
若い職人と飲む時は7~8杯はいく
宴会も終わり地元の駅に着くと激しい雨に見舞われた。
傘なしでは無理な勢い
しかしこんな事もあろうかと、コンビニで大き目の傘を買っておいた僕は勝ち組である。
傘をささずに走ってる人とか見て「バカ野郎が!けっ!!」とか、心の中で思う本物のクズ野郎だ、僕は。
「酔っ払っちゃいましたよぉ~~~だぁ」とか独り言を言ってたと思う
傘を得意気に開いて歩いていると、後ろから人の気配を感じた。
明らかにトボトボと諦めた感をビンビン放っていた。
僕って基本的に良い奴じゃないですか?
心のどこかに「美人になら傘を譲っても良い」ルールがあったんでしょうね。
チラ見からの二度見
何か感じる物があったんだと思う。
僕のレーダーは時々当たる。
直感を信じて振り返った。
女子だ・・・
終電の終わったこの時間に女子が一人、雨に打たれながら歩いている。
可愛そうに・・・。
でも何かまだ感じる物があった。
僕の美人レーダーは例え後姿だろうと高確率で当たる。
二度見からの三度見
普段なら恥ずかしいから何度も振り返って見たりしないんだが、酒の力も有り、、今年初の三度見である。
やべえ!目があった!!
三度も振り返るとさすがに目が合ってしまうもんである。
凄い美人だった事もあり、三度見した事が急に恥ずかしくなってきた・・・。
しかしお酒の力は怖い。
こんな顔をしてたと思う・・・
まだ駅の改札を出て少し。
激しい雨とは言え、ビショビショってほどでもない感じ。
今ならまだ間に合う。
急にこの人に良い事をして、あわよくば好かれたくなった。
やっぱり僕はクズである。
40歳のかんた
傘を差し出し使ってもらおうと思ったが、どうも反応が鈍い・・・。
照れてるのかな?
そう照れるなって!
「良かったらどうぞぉ~」
とか言ったら
「大丈夫です、大丈夫です・・・」
と言う。
遠慮してる感じがしたので
「俺んちすぐそこだから!」
とか言ったらまた無言で歩き始めた。
あれ?どした・・・・??
何、何?どしたぁ~?
このままでは俺がただの不審者で終わってしまう・・・。
ちゃんと説明しないとクズな上にストーカーってレッテルまで貼られてしまう!
弁明の余地を!
もうこうなったら必死である。
向こうは傘を受け取らないし、受け取らないとは言え自分も濡れたくない。
出た結論が、一つの傘の元、弁明させてもらう!である。
不審者じゃないんです感を必死で演出
「いやぁ・・・、俺もさぁ・・・・、いきなり傘とか差し出されたらビックリするかなぁ~とか思ったんだけどさぁ~」
「ちょっと見てられなくなってですねぇ・・・」
「でも確かにこんな夜遅くに怖いよね?ごめんね!!」
「もうほんと、俺んちすぐそこだから!この傘使って!!ね!?」
必死である。
けっして不審者ではないんです。
俺は善意の気持ちなんです的な表情まで作って。(そもそもの動機は不純である)
しかしその時、しばらく反応無かった女性だが、こっちを振り返った。
なんですか??
いやぁ~、髪の毛が長いから気付かなかった・・・。
聞こえてなくても「大丈夫です」とか返すよね・・・。
帰り道くらい自分の世界に浸りたい時もあるよね、分かる・・・。
結果コレである
彼女は悪くないんだ。
もし悪いとするならば、携帯電話から音楽が流れるテクノロジーや耳の穴にステレオホンを突っ込む文化である。
昔のようにラジカセ担いで耳に当ててれば、こんな事にならなかった訳で。。
って事で僕も悪くない。
悪くないっつー事で良いよね?
え?下心あったんだから悪いだろって??
僕がやったのは人助けですよ!
強いて言うなら突然降った雨の方が全然悪い!!
いや・・・、天気のせいにするのは止めよう。
そうだ、誰も悪くない。
誰も悪くないから僕も悪くない。
よし。
丸く納まった。
良かった。
でも、こんな顔をしてたと思う
上記のように僕が完全に悪くないと言う事が立証された訳ですが、さっきまで必死に喋っちゃったのに無駄だった喪失感と、心の中で少しだけ「ああ・・俺・・・・近所の人にやらかしちゃったんだなぁ・・・・・・」という絶望で、やっと出た言葉が
「ですよねぇ~」
だったという。。
何が?っつー話しですよね?
自分でもビックリしますが、人間って思いもよらぬ事態に遭遇するとつい出ちゃうんでしょうね。
「ですよねぇ~」
って・・・・。
さらに雨は強くなった・・・
心の中でいかに「誤解なんです!誤解なんですっ!!」って叫んでも、時すでに遅し。
ヘッドホン外して聞いてやったのに、オッサンから発せられた一言が
「ですよねぇ~」
では、逃げるよね。
僕でも逃げる。
と言うか金玉を蹴り上げてから逃げると思う。
奇跡的に金玉は無事でしたが精神的にはとんでもないダメージを負った訳で・・・。
個人的には小学生の頃に担任の先生が「この中でファミコンが家にある人ぉ~?」って聞いて、僕以外の全員が手を挙げた時ぐらいのダメージでした。
ありがとうございました。
ですよねぇ~
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