今年もやってまいりました、1年に一度の大仕事であるイ草刈りの季節到来!!
3年目になる今年も4泊5日で行って来ましたよー。
今年も畳訓練校の先輩だけど年下の足立区 東和小川畳店さん と本気のイ草農家作業を楽しみに☆
東和小川畳店
実は3年目にして知ったのですが、イ草農家さんって各々作業が違うそうなんですよ。
私達がお世話になっている吉田さん一家の作業は、その中でも昔ながらの製法にこだわり人手が無いと大変なんだそうです。
しかしなぜ、あえてその大変な製法にこだわるのか?
それは吉田さん曰く
「イ草は生物だから、その時々・その品種・その気候によって製法を変えるには昔ながらのやり方が一番理にかなっているいるんだよ」
と、いつものように優しい口調で教えてくれました。
その説明に納得。
吉田さんの作った畳表には品質のバラつきが全くありません。
ですので今回は長くなりますが吉田さん一家のイ草刈り作業工程を紐解きます。
イ草農家の朝は早い。
吉田さんのお父さん(爺ちゃん)は夜明け前の3時30分頃からイ草を刈り始める。
吉田さんと奥さんもそれに続いて刈ったイ草を運搬。
息子さんと私と小川君は4時30分頃から働き始める。
まずはイ草の刈り取り機が田んぼに入れるよう、鎌で刈ったイ草束をすぐる。
「すぐる」とは畳表になる長さのイ草のみを残し、短いイ草を叩いて落す作業のこと。
機械化されても全ての手作業が無くなった訳では無い。
昔は全てのイ草を鎌で刈取り、すぐっていたそうです。
今年からイ草刈取り機の操縦も教えてもらえるようになりました。
吉田さんの息子、貴ちゃんが来年からは他の作業に従事できるよう、私と小川君がこの機械の操縦を習えば本当の意味でお手伝いができると思い直談判しました。
まあ、そんなに簡単なもんじゃ無いんですけどね・・・。
刈り取ったイ草はトラックに積む。
川が氾濫寸前の大雨でも作業は続く。
余程の事が無い限りイ草農家は休まない。
なぜならこの3週間ほどが1年を決めると言っても過言ではないほど大切な時だから。
雨に濡れたイ草は艶々していて、弾いた水滴が朝日で宝石のように煌びやかに輝く。
急いでる作業中でも束から落ちてしまったり抜けてしまったイ草も、吉田さん一家はきちんと束に返して無駄にはしない。
その光景を目の当たりにし作業を遅らせる事無く、いかにイ草を大事に扱えるか?
3年目の今年は新たな課題ができた年でした。
刈り取ったイ草は鮮度(染土)が命!
間髪入れずに泥水をくぐらせます。
なぜ?なぜ泥水にイ草を入れるのか??泥水って何だ???
お答えいたしましょう。
まず最初にイ草は植物です。
なので根本から切ると枯れます。
普通は枯れると萎れて茶色くなりますよね?
イ草は特殊な構造を持った植物なので、土を溶かした泥水に浸けることにより表面がコーティングされます。
その泥を「イ泥(どろ)」とか「イ土(つち)」とか「染土(せんど)」とか言います。
この作業をしないとイ草は日焼け(枯れたような色)が早まってしまいます。
勝手な考察ですが映画のプラトーンでシュワちゃんが泥水に浸かり、エイリアンの赤外線センサーに感知されなかったシーンがありましたよね。
あのように日の光を土によって遮り、日焼けを防いでいるのだと思います。
当店ではお客様の手元に届いた畳は全て綺麗に拭いていますので、表面に染土はありません。
ですが当店で畳表を保管している状態で日焼けしないように必要なのかと思います。
また、イ草の独特な香りは「イ草」と「土」が合わさって初めてする香りです。
イ草のみだと牧草のような香りです。
現在では一部ですが、その染土を大目に付け品質を誤魔化したり、、より綺麗に見せるために染土を多く付けるための添加物や染料を混ぜる農家さんもいるそうです。
誤解の無いように言っておきますが、染土自体は天然の土です。
自信の無い農家さんほど染土が多く付着しているような気がするのは私だけでしょうか?
吉田さんの染土はかなり少ないです。
中には染土自体使用しない農家さんもいます。
様々なメリット・デメリットがありますので一概には言えませんが、畳屋がそれを知りお客様に説明できるようなら一番良いと私は思います。
ようやくここで朝ごはん・・・。
気分的には昼ごはんでございます☆
食べたらすぐさま前日、乾燥釜に入れて干し上がったイ草を袋詰めして保管庫へ。
爺ちゃんが振るいにかけてから根本を「きびる」(紐で結ぶこと)
私が穂先を「きびる」(紐で結ぶこと)
小川君が袋をかける
息子の貴ちゃんが個数と重量を測りながら袋を縛って運ぶ
この作業は私と小川君が交互に交代しながらやっています。
普段、私達がいない時は奥さんとお婆ちゃんの仕事。
朝食の後片付け後に人数が揃うと仕事の奪い合いが始まる☆
吉田家は全員仕事に飢えているのです・・・。
とにかく各々の仕事をこなしつつ、手の空いた人は自分の出来る事をする。
ほとんど手作業にもかかわらず、この作業は他のシステム化された農家さんに比べてかなり早いそうです。
一日だけ爺ちゃんが病院に行くのでいませんでしたが、吉田さんが爺ちゃんの代わりをやって息子の貴ちゃんが吉田さんの代わりをやる。
チーム吉田は恐ろしいまでの連係プレーを見せつけるのでありました☆
まだまだ午前中は続きます・・・。
次は袋詰めしたイ草を保管庫へ納めます。
この日は爺ちゃんと婆ちゃんが渡してくれたイ草束を私がリフト?に乗せる係。
乗せるだけならそれほど大変ではないのですが、爺ちゃんと婆ちゃんがせっかちで次々渡すもんだから束をずっと抱えている状態。。
運ぶのも大変だけど抱えて待つのも結構大変。。。
しかし二階の保管庫では別の闘いが繰り広げられていた。
って訳でここでようやく午前の休憩。
すでに起きてから5時間くらい労働してる☆
午前の作業終了後、勝手に押しかけている我々から風呂に入らせてもらい、、昼食をいただき昼寝まで。
3食・風呂付・昼寝付きの好条件なのでした。
昼からは主に網上げや刈取り、泥染めの作業。
雨ならカッパ着て田んぼへ。蒸れて暑いからビショビショに。。
晴れなら長袖に帽子で田んぼへ。灼熱の太陽でビショビショに。。。
曇りならズボンだけカッパを履いて、晴れた時用に帽子や長袖着てビショビショに。。。。
どちらにしても農家さんの作業は体力勝負で、ある意味天候との闘いでもある。
イ草はとても長く伸びる。
しかし細いので風が吹くと倒れてしまう。
倒れないように網をかけておく事で真っ直ぐ長く伸びあがる。
網は刈取りの時は邪魔なので、刈り取る直前に回収しなくてはいけない。
田んぼに出る前は雨だったのに、着いたら晴れてカッパの内側が皆ビショビショ・・・・・。
網を取ると寝ちゃうイ草、網なんて無い頃は寝たまま伸びたそうだ
イ草は2年かけて畳表となり、畳屋が張り替えてお客様の家に届く。
植え付けの準備であるポット苗からお手伝いし、自分で植えたポットの成長を吉田さんが定期的に教えてくれていた。
「涼風」は新品種と言う事もあり、畳表になってみないと断言はできないが個人的な感想は「抜群に良い!」である。
吉田さんが育てたからというのも勿論あるが、まずイ草の一本一本が太くて中身が充実している。
通常は細く弱い穂先の方までしっかりしている。
また、表皮が厚く長く伸びたので畳表になったら耐久性は抜群に良いと思う。
今回刈り取ったイ草は9月頃から入荷予定です。
農薬や肥料など厳しい設定でクリアした{特定栽培農産物}に指定されている畳表です。
残留農薬試験も全て「0」なので、赤ちゃんでも安心。
お問い合わせの際は是非「吉田さんの畳表で!」とご指名ください。
最後に。
この度は熊本地震で被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。
イ草産地の八代市周辺でも壁の亀裂や屋根にかかったブルーシートなど、未だに被害が確認できる状況でした。
そんな中でも農業は生き物相手。
農家さん達は休みません。
今、私に出来る事。
今年の刈取りは、いつもより少し引き締まった気持ちでお邪魔しました。
頑張っている人に「頑張れ!」は言いません。
一言「いつでも味方だよ!!」ですね。
一日も早い復旧と復興を心よりお祈り申し上げます。
※一部写真提供 (有)佐々井商店 熊本支店長 ありがとうございました。
東京北区で四代100余年 (有)八巻畳工業
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