『有職故実に基いた畳』という意味で、古来より伝わる材料(素材)を使用して古来より伝わる製造方法を用いて作られた畳の事を言います。
最も位の高い『御神座』は下から厚畳・八重畳・龍鬢・御茵と積み上げられており、神祇調度品として神様が座る畳になります。
寺院でよく使用される礼盤(らいばん)は高麗紋縁(こうらいもんべり)が使用され、武家社会の頃は有職故実によると階級・位によって畳縁の使い方が定められていました。
そのため紋縁には同じ柄でも大小や色違いのバリエーションがあり、位の高い親王や大臣は高麗の大紋、大臣以下の公卿は小紋を使用と定められていたそうです。
このように使用されてきた畳や茣蓙類を出来るだけ当時と同じ材料を用いて、同じように作成された物を【有職畳】と呼んでいます。
知識の無い畳屋が「俺の作り方はこうだから」とか「材料が揃わないからコレでいいや」とオリジナルな事をしてしまうと、数十年後に張り替えたり新調する畳屋は古来の素材や作り方と勘違いして更におかしな畳になっていきます。
実際に起こっている現象ですが、これは有職畳とは呼びません。
厚畳(あつじょう) 礼盤(らいばん/らいはん) 一畳台 二畳台
概ね半畳サイズの畳で、敷き込むのではなく床に置いて高座として使用する。
通常は半畳の裏表に畳表を張り、高麗紋縁で四方と側面までを覆い、見えない裏側も表と同じように仕上げる。
茵(しとね)・ 褥(しとね/じょく)
現在使われている畳の原型となった座布団のような畳。
畳表(ゴザ)を5枚重ね芯材とし綿を下地にした大和錦の額縁と、中央は鏡と呼ばれる白い地紋の入った布が被っている。
拝敷
僧侶が仏前で座する時に使用される茣蓙。
大きさは1畳サイズと半畳サイズがあるが、どちらも四方に高麗紋縁の大紋を2紋出し、四隅に守護神である四天王を表す四天を付ける。
畳屋なら誰でも作れると思っていたら大間違いな理由
本式は被せた茣蓙と土台の紋合わせをして、くけ縫いする
畳屋には国家資格である『畳製作二級技能士』と『畳製作一級技能士』の免許がありますが、この資格を持っていなくても畳屋はできますので所持していない畳職人の方が圧倒的に多い実態があります。
一級技能士になるには手縫いによる畳製作は勿論、建築基礎の学科も含まれるため取得後は凄い職人のイメージがありますがこれは間違いです。
技能士免許はあくまでも一般の畳製作を基本としているため、寺社仏閣の有職畳が作れるか?というと、こちらは全くと言っていいほど別次元の話になります。
勿論資格無しの職人に比べたら知識と技術は裏付けされたものがあります。
しかし有職とは古来の奈良や京都から来ており、関東にいて一級技能士を取得したとしても有職畳は略式で習うことがほとんどです。
先に述べましたが有職畳は古来の素材と製法を用いて初めて成り立つものですから、略式で作られた畳は『造作畳』と言って良いでしょう。
この【本式】は主に京都の畳訓練校や畳店で弟子のみに伝わる技法で、全国でも見ても本式を理解している畳職人というのは、ほんの僅かしかおりません。
それでも本式の有職畳を残したい!
その元に集まった、ちょっと変わった畳職人たち
奈良県の浜田畳店代表(奈良県吉野町)である十四代目当主、浜田賢司さんは京都の畳店に弟子入り。
そこで得た知識と技術を後世に残すため『TTMクラブ』を設立。
京都だけではなく、全国の若き畳職人へ京都式の技術研修を行っています。
TTMclubとは、Tatami(畳)Technical(テクニカル)Management(マネジメント) (atumari.net)
私が初めてTTMクラブに参加したおよそ10年前。
一級技能士免許は取得していましたが、
研修合宿では専門用語が多く理解が追い付かないだけではなく、
全国から集まった技能グランプリに出るような凄腕の畳職人さんたちに圧倒されて、実技で針を持つことなく終了を迎えました。
「次回の研修合宿では率先して針を持ち、皆の前で手縫いをしてやろう!」と心に誓ったのを今でも覚えています。自分の無知と技術不足を認めた私はそこから必死に勉強をし、迎えた実技研修では下手なりに技術を披露することができました。
参加していた全国の凄腕職人さんたちとも意見交換をして、その日は夜間の座学後、深夜まで畳の話をして浜田代表に「はよ寝んかい!」と怒られるほどでした。
日本全国に畳職人は大勢いますが、このように勉強をして鍛錬を積み、本式の有職畳を残す努力をしている仲間は限られています。
もしこの記事を見てくださっている寺院の関係者様がいましたら、有職畳に関してだけは業者をお選びください。
建築士や工務店が連れてきた畳屋さん、本当に有職畳の事を知っていますか?
お見積もりは無料です
寺社仏閣の伝統を正しく引き継げる畳店
また地方でも本式の有職畳を作れる畳職人は少ないですけど全国に存在します。
そのような職人を探している方がいれば、ご紹介することも可能です。
年に二回の研修合宿で切磋琢磨し合った仲間たちは、意外にもその知識と技術をアピールする術を知りません。
どうか有職故実に基いた本式の有職畳を後世に残すため、寺社仏閣の畳はお選びいただくようお願い申し上げます。
有限会社 八巻畳工業 03-3917-9827