畳は植物で出来ていますので雨が降った日の畳替えは濡れてダメになってしまうのでは?と不安になりますよね。

今回は雨天でもほとんどの場合は問題無い理由と、畳の納品を諦めた方が良いケースをご紹介します。

 

雨降ってきた!どうしよう?

 

 

雨の場合、畳の引取り時と納品時で違いがあります

畳替えの場合、畳屋さんによっても違いますが『即日仕上げ(納品)』と『翌日以降納品』があります。

即日仕上げは畳替え当日の朝に畳を引取り、出来上がり次第納品という形に。

翌日以降の納品では文字通り引き取った畳を翌日以降のご都合に合わせて納品という形です。

基本的にはどちらも引取り時であれば雨が降っていても問題ありません。

なぜなら傷んでしまった畳表(表面のゴザ)は新しく張り替えるからです。

多少濡れても本体部分である畳床まで水が浸透することは滅多にありません。

 

撥水する畳もある

 

では納品時はどうでしょうか?

出来れば新しい畳表は濡らしたくありません。

ただ、製作工程の中に【畳表に霧を吹いて濡らす】作業があります。

後ほど詳しく説明しますが、結論から言うと小雨程度ならほとんど問題ありません。

また、雨天の場合は納品時間をずらすなどして激しい雨を避けることも可能です。

 

霧吹き

 

畳替えの種類による?新床・表替え・裏返しで違う雨天納品リスクとは

 

畳替えの種類

 

基本的に畳は針と糸で縫って仕上げます。

畳用の針は太いため、畳表を刺した際に乾燥していると藺草が切れたり縫い穴が広がって見栄えが悪くなります。

そのため畳表(ゴザ)を畳床に縫い付ける時には必ず霧吹きで畳表を湿らせてから逢着します。

これは藺草が一本一本の中身はスポンジ状になっているため、穴が開いたり潰れてもスポンジ部分が水分を吸うと膨らむという特性を生かしております。

 

藺草の断面

 

畳の短手の場合は側面を縫いますので、側面部分の裏側へ。

長手方向は縁を縫い付けますので縁の付く部分だけですが、表面に霧吹きします。

上記は新床でも表替えでも裏返しでも必ず行う作業ですので、実質畳表は一度湿らされているという事です。

現場作業をしていたその昔、畳屋が口に含んだ水を「ブーーーーーーーー!!」と畳に噴いているのを見た事がある方もいるかもしれません。

まさにあの動作が現在では霧吹きに置き換わっています。

でも過去のその方法、このご時世なら大問題ですよね☆

 

裏返しだけは更に畳表の表面全体にたっぷり霧を吹き、湿らせるというより濡れた状態でブラシをかけます。

理由は張り替える前まで下側になっていた面は、踏まれたり家具の圧力により藺草が潰れたり傷になっていますので、それを霧吹きの水分によりもう一度復元させるためです。

また、裏側だったとは言え細かいホコリなどの汚れが付着しています。

それをブラシで掻き出すという理由もあります。

結果、裏返しの畳表は一度しっかり濡れているという事です。

裏返し作業の畳だけは普通に濡れることがあっても、ほとんど問題がありません。

 

畳屋専用のブラシ

 

 

 

雨天時の納品判断と絶対に納品しない方が良い天候

「雨が降りそう」というだけで降っていなくても延期を申し出るお客様も中にはいます。

これはこれで畳が無くても大丈夫な場合は有効な手段だと思います。

しかし畳屋の都合もありますので「雨の止む夜に持って来い」とか「明日の何時にしかいないから持って来い」などの都合は受け入れてもらえないと思った方が良いでしょう。

畳屋は毎日のように畳を納品しています。

「この程度の雨なら大丈夫」という長年の勘もありますので「絶対に雨の日は嫌!」という訳でなければ、畳屋に納品のタイミングは任せた方が良いかもしれませんね。

 

そんな畳屋の私でも絶対に納品に行きたくない、行くべきではない天候は『雷雨(ゲリラ豪雨)』と『雪』です。

雪は降り始めなら良いのですが、積雪となると話は別です。

霧吹きで説明したような満遍なく濡れる雨と違い、塊で濡れるので染みになりやすいのです。

道路状況も悪いため東京では交通が麻痺して畳のお届けも時間がかかりますし、凍結などしていれば事故のリスクが高まりますよね。

 

雷雨やゲリラ豪雨は畳がビショビショになるのは勿論ですが運んでいる本人も濡れて、お客様宅を汚してしまう可能性があります。

そのため納品はしませんが、出発時点で大した事が無くても着いた時に豪雨という事はあります。

大雨はそれほど長続きしませんので、小雨になったタイミングで納品という形になるでしょう。

 

こんな大雨は絶対に無理

 

 

濡れてしまった畳のメンテナンス方法と、カビ予防にはアルコールが有効って本当?

雨の日の納品に限らず、畳を濡らしてしまう事ってありますよね。

畳表に使用される藺草は植物ですので、濡れてしまうと染みになったりカビが生えたりします。

極論ですが水が染みてしまった畳表は元通りにはなりません。

しかしその状態より悪くしない方法はあります。

 

まずは雨などで畳が薄っすら濡れてしまった場合の対処法。

表面に水滴があるようでしたら乾いた布でよく拭き取ってください。

次に和室を乾燥させます。

この作業は時季によって違いますが湿度の低い時季であれば窓や間仕切りの扉を開け、風を通して畳の湿気を飛ばします。

湿度の高い時季は和室を閉め切ってエアコンや除湿器で和室自体の湿度を下げます。

湿度の低い時季・高い時季に共通して行って欲しいのは【部屋の中の空気を風で動かす】という事です。

扇風機を回す事が最も有効な方法で、併用することにより大幅な除湿効果が期待できます。

 

次に染みが出来てしまうほど濡れてしまった場合。

一番良いのは【畳の張り替え】です。

前述したように染みは元通りには戻りません。

それでもコストを掛けたく無い場合は長い目で見ましょう。

応急処置として濡れた部分の水分を飛ばします。

エアコンなどで和室全体の湿度を下げることは勿論ですが、扇風機を局部に集中させて回します。

カビが生える前にとにかく乾燥させる事が重要です。

畳に残ってしまった染みは畳表が緑色の時は目立ちますが、日焼けして茶色くなってくるとほとんど目立たないようになってきます。

裏返しで染みがそのまま出てしまうというリスクは回避できませんが、これもまた日焼けしてくると目立たなくなりますのでご安心ください。

 

濡れてしまった畳の一番高いリスクは【カビ】です。

真冬など低温で乾燥した時期には生えにくいカビも、一定条件を満たした5月から9月くらいまでは当然のように生えてきます。

普段あまり使用していない部屋などは発見も遅れてカビだらけに・・・、なんて事は良くあることです。

そんな時は70%に希釈したアルコールを噴霧してカビを良く拭き取ってください。

薬局で70%が売っていなければ100%を購入して水で7:3に希釈して噴霧します。

エタノールでも同じ事です。

その後にエアコンや扇風機を使って畳自体の湿度を下げれば完了です。

 

70%が決め手

 

 

施工当日が雨の日というのは本当に悩みますよね。

しかし多くの場合は問題ない事もご理解いただけたのではないでしょうか?

畳替えする和室の状況にもよりますが、概ね2階以上は湿気が籠らないのでカビなどの最悪のリスクも回避する可能性が高いと言えます。

当日雨天だからと言って悲観することなく、畳屋さんとしっかり打ち合わせてみてください。

 

東京都北区で四代110余年

有限会社 八巻畳工業